4代目プリウスに搭載された2ZR-FXE。世界で初めて最大熱効率40%を達成した量産ガソリンエンジンである。しかもトヨタ方式のHEVは効率の高い領域を多用する運転だから、受け取る燃費効果は大きくなる。
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
トヨタ2ZR-FXEエンジンのデビューは2006年秋である。これを吸排気VVT化しバルブマチックによるバルブリフト量可変機構を導入した2ZR-FAEの登場はその3年後の2009年。ボア80.5×ストローク88.3mmという気筒寸法は3代目プリウスに搭載された2ZR-FXEでも変わっていない。FXEはアトキンソンサイクル(トヨタ呼称のNAミラーサイクル)とクールドEGRを採用し、THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)との併用に特化させたエンジンだった。その延長線上に、今回の4代目プリウス用エンジンがある。名称は2ZR-FXEのままである。
「筒内直噴は考えていませんでした。エンジン生産ラインの流用が大前提だったので、大きな変更は考えなかったのです。ポート噴射のままで熱効率40%を狙おう、と。実は、先行開発の段階で採用アイテムを積み上げていっても40%にはあと少しで届かなかったのです」
ユニット主査を務めた太田氏はこう語る。3代目プリウスに搭載された2ZR-FXEは最大熱効率38.5%だった。そこからの1.5%を小幅な改良で達成するという決断だった。熱効率改善の目標管理とアイテム開発を担当した西浦氏が付け加える。
「個々の部品に何ができるかを考え、すべてに理由のある小改良を積み重ねた結果の40%です。新たに追加したデバイス、まったく新規に採用した部品はふたつだけです」
そのふたつが非常に興味深く、同時に日本の自動車産業の成熟度、成熟した結果としての奥深さのような印象を抱く。ウォータージャケットスペーサーとフローシャッティングバルブ。ともに冷却水路内に組み込まれた部品である。トヨタの発表資料によると、新しい2ZR-FXEエンジンは2000rpm、BMEP 0.4MPaのときの冷却損失を8%改善している。排気損失が若干増えたものの、全体では熱効率40%を達成した。冷却損失の改善がいかに内燃機関にとって重要であるかをあらためて認識する。