東レは、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)が有する高い耐熱性や耐薬品性を維持しながら、世界最高レベルの柔軟性を有した新規PPS樹脂の開発に成功した。本年4月から自動車用途を中心に本格提案を開始するとともに、幅広い工業材料分野で用途展開を進めていく。
PPS樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性などの特性をバランス良く有しており、年率約7%で拡大しているスーパーエンジニアリングプラスチック。主に、金属代替として耐熱性や軽量・高強度が求められる自動車用途で広く普及し、パッキンや自動車配管など柔軟性が求められる用途ではエラストマーを配合したPPS樹脂が使用されている。しかし、耐熱性や耐薬品性を維持しながらの柔軟性付与には限界があり、高い柔軟性を有したPPS樹脂の開発は長年の課題だった。
東レは、長年の研究・開発で蓄積した技術データベースをもとに設計した革新的なマテリアルデザインと、同社独自のナノテクノロジーであるナノアロイをベースとしたアロイ精密制御技術を用いてポリマー構造を最適化することで、弾性率1,200MPa以下という、世界最高レベルの柔軟性を有した新規PPS樹脂の開発に成功した。この新規PPS樹脂は、170℃で1,000時間処理しても機械強度の低下はなく、実使用環境で必要な酸やクーラント(自動車冷却液)に対しても高い耐性を有していることを確認している。また、自動車配管用途への展開を見据えた中空配管での加工性検証や、樹脂特性の適正化を進めてきた。
今回開発した新規PPS樹脂を用いることで、従来実現できなかった自動車配管部品の樹脂化や、部品点数削減、工程簡略化などが期待できる。既に自動車配管用途で提案を開始しており、本格的な材料提案開始に向けて、今回開発した新規PPS樹脂の生産体制の準備を進めている。