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レクサスUXのバランサー──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第13弾


レクサスの新型SUVであるUXには、2種の新型エンジンが搭載されている。ともに2.0ℓの排気量を持つ4気筒エンジンながら、ハイブリッド用とコンベンショナル用で求められる性能が異なるため、多くの点で機械的特徴を違えている。そのひとつがバランサーの有無である。


TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)

 レクサスブランドにエントリーモデルとして新たに投入された「UX」。2.0ℓの自然吸気ガソリンエンジン仕様とハイブリッド(HV)仕様のふたつのパワートレーンを用意する。エンジンは基本骨格を共用しながら、それぞれの要求性能に見合うよう、バルブタイミングやピストン形状、吸排気系などを専用設計している。




 驚かされたのは、シリンダーヘッド本体まで作り分けていること。純エンジン仕様とHV用では、吸気ポートの形状が異なるのだ。


 いずれもタンブル流を強化して急速燃焼させるコンセプトだが、タンブル流を強めるには、吸気の流れを意図的に偏らせる必要があり、やりすぎると流量係数が低下して体積効率が悪化し、最高出力が高めにくくなる。そのバランス点が、エンジン単体運用とHVでは異なるため、わざわざ吸気ポート形状を作り分けたというのだ。

吸気ポート下面の「ジャンプ台」の様子(図中赤丸部)。レーザークラッド式バルブシートを用いるおかげで設計の自由度を高められ、寸法も詰められるようになった。*なお、この図は「UX200」のところに掲載されているものだが、各種を調査しても「UX250h」のM20A-FXSのシリンダーヘッド断面図にように思える。

ご参考に、こちらが「UX200」のM20A-FKS型シリンダーヘッドのポート形状。上図と左右が反転しているが、吸気ポート下面の形状の違いが見て取れる。

 具体的には、HV仕様のほうがより高タンブルを発生させるため、ポートの下側をスキーのジャンプ台のように持ち上げている。こうすることで、吸気はバルブの傘面を舐めるように流れて指向性が強まり、流速が高まってタンブルが強化される。それによって犠牲になるパワーは、モーターアシストで補えるからOKだ。


 違いは吸気ポートの形状だけなので、金型は共用しながら、ポート部分の中子だけ変えれば良い……のかと思ったら、一目で区別が付かないと製造現場が困るから、外観も変えているのだそうだ。

バランサーの例。ダイムラーM271型4気筒エンジンに採用されたランチェスターバランサー。

 両エンジンのもうひとつの大きな違いが、バランサーの有無だ。バランサーを付ければ、2次振動が減って振動騒音性能は高まる一方、駆動損失が増すから、燃費には不利になる。だから、燃費重視かつ基本的にアイドリングしないHVにはバランサーは付いておらず、純エンジン仕様のみ装備している……のかと思ったら、UXのそれは反対なのだ。




 近年はエンジンの稼働部品の軽量化が進み、起振エネルギーそのものが小さくなっているため、2.0ℓエンジンならバランサーは省略される傾向にある。しかし、モーター駆動とハイブリッド駆動を繰り返しながら走行するHVの場合、双方の振動レベルの差が大きいのは、違和感のもととなる。しかも全開加速時には、上乗せされたモーターのトルクでエンジンマウントがストッパーに当たり、その状態でエンジンの高負荷振動が発生するから、勇ましい音が伝達されやすくなる。だからエンジン本体が発生する振動を、なるべく抑えておく必要があり、HV仕様のみ、バランサーを付けたというわけだ。




 こうした作り分けの甲斐もあり、純エンジン車のUX200とHVのUX250hでは、明確にキャラクターが異なる。軽快で加速サウンドもスポーティな前者に対し、後者は重厚かつ静粛で、大排気量エンジン的力強さも併せ持つ。どちらを選ぶかは好みの問題とはいえ、「レクサス」のイメージに合うのは、やはりUX250hではないかと思う。

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