ティッセンクルップ・エレベーターは、米マイクロソフトと、スイスに本社を置くIT会社チュールケと共同開発した、MR(複合現実)を活用したソフトウェア「HoloLinc(ホロリンク)」を、自社の階段昇降機の営業提案に本格導入した。
HoloLincは、階段昇降機業界において初めて営業プロセスを完全にデジタル化させたソリューションで、突然生じる顧客のモビリティソリューションのニーズに対し、いかに要望に沿いながら納品プロセスを短期化するかという階段昇降機業界の課題を克服するもの。マイクロソフトのヘッドセット型MRデバイス「HoloLens(ホロレンズ)」を活用したHoloLincにより、発注から納品までの時間を最高で4分の1に短縮できるだけでなく、自宅に昇降機を設置した際の実際のイメージや特定の要望に合わせてカスタマイズした場合のイメージを視覚的に把握可能にすることで、これまでにない最高の顧客体験を提供する。
HoloLincはオランダでの試験導入後、これまでに300件以上もの導入実績がある。今月からはイギリス、ドイツ、ベルギー、フランス、イタリア、スペイン、フランスでも導入開始となり、日本とノルウェーには来年から導入される。
MRを大規模なフィールドサービスで活用し、マイクロソフトのHoloLensを高精度な計測器として応用するのは、HoloLincが初めての事例。データ処理を全てデジタル化することにより、測定やデータのやり取りにおける人的ミスのリスク回避が可能になる。またMRと、クラウドを用いたコンフィグレータを組み合わせることで、納品までの所要時間を著しく短縮できる上、他に例のない顧客体験の提供も可能になる。通常は納品まで約40日から70日かかるところを、HoloLincを導入することで納期を最高で4分の1まで短縮し、14日程度に抑えることができる。
初訪問時に、昇降機導入先の測定を正確にできることで、ティッセンクルップ・エレベーターは顧客の個別の人間工学的データや、各導入先が持つ特有の障壁を考慮に入れることが可能になる。これらのデータはマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure(アジュール)」に送信され、このデータを基に顧客にとって最適な階段昇降機製品を選定します。ほぼリアルタイムで設置イメージを視覚化したり、見積もりを提示することができるので、発注プロセスまでの所要時間を数時間程度に抑えることが可能になった。
ティッセンクルップ・エレベーターのCEO、アンドレアス・シーレンベック氏は、次のように述べている。
「階段昇降機は、急に必要になるものです。もし早急に解決策をご提供できれば、お困りのお客様に大きな安心感と快適さをもたらすことができ、結果的にお客様の生活の品質向上にもつながります」
世界各地のティッセンクルップ・エレベーター営業担当者120名が、HoloLincを活用予定。各営業担当者には、マイクロソフトのHoloLens、タブレット、持ち運び可能なプリンターなどの付属品が入ったHoloLincのツールキットが配布される。HoloLincにより、空間の計測やデジタル化は真の意味で変革を遂げ、営業担当者が営業先で即座に製造へとつなげることが可能となる。
IoTの力をHoloLincのようなソリューションに活かすことで、ティッセンクルップ・エレベーターはデジタル時代のさらに一歩先へ進み、モビリティソリューションの提供の仕方を変える。MR技術の応用により、営業担当、事務担当、製造チーム間のコミュニケーションが速くなることは、大きな飛躍と言える。