3D-LiDAR の研究開発を進めるパイオニアは、2020年をめどにその量産化を目指すという。オランダHERE(ヒア)社との提携により、自動運転用地図とその更新、運用システムの構築への注力姿勢も明確化、ナビメーカーならでは切り口から自動運転技術に対しての包囲網を固める構えだ。
TEXT:高橋一平
近い将来のドライブ環境を疑似体験することのできる「コンセプト・コックピット」がステージ中央を華々しく飾っていたパイオニアのブース。しかし、その本命とも言えるのは小さなクリアケースに納められた展示だった。
2017年9月下旬より自動車メーカーなどに向け同社が供給を開始している3D-LiDARのサンプルをはじめ、対応距離(レンジ)や視野角などが異なる4種類の製品を参考出品として展示。10月26日に行なわれたプレスブリーフィングに登壇した同社取締役兼常務執行役員・大館 諭氏のスピーチは、同社における3D-LiDARの開発状況と、今後数年に向けた目標についてという部分から始まり、そのロードマップがスクリーンに投影されると、手のひらに載るほどコンパクトな3D-LiDARのプロトタイプ実機を自ら掲げるなど、3D-LiDARに対する意気込みが強調されたものとなっていた。
同社の3D-LiDARで注目すべきはMEMSと呼ばれる半導体上に構築するマイクロマシン技術の応用。レーザーの投射方向のコントロールにMEMS技術による角度制御可能なマイクロミラーを用い、ジグザグ状の軌跡で走査していくラスタースキャン方式を採用、ソリッドステート部品のみでメカ部分を一切持たないということから、小型化はもちろん、耐久性などといった信頼性の面において飛躍的な進歩をもたらす可能性を秘めているといっても過言でない。
ちなみに、このMEMS技術による角度制御可能なマイクロミラーは、光源にレーザーを用いるHUD(ヘッドアップディスプレイ)にも応用が可能であり、ブースには同技術を用いるHUDの試作品も展示されていた。スピーチでは他にも先に(2017年9月)同社が資本提携を行なうとの発表があったオランダのHERE Technology(ヒアテクノロジー)社、パイオニアの子会社であるインクリメントPとともに三社体制で自動運転用地図事業の推進を加速、これにより日本政府の推進するSciety5.0においても次世代GIS(地図情報サービス)技術で貢献していくことをアピール。自動運転用地図の更新や配信という運用を効率的に行なうためのデータエコシステムの開発、構築にも注力していくとのことで、3D-LiDARから地図情報まで、自車位置の把握(推定)という観点から自動運転技術に対して包囲網を築いていこうという、カーナビ分野において草分け的存在である同社らしい姿勢が窺えるものとなっていた。