ヤマハのブースの一番目立つ場所にあるのはバイクではなくて4輪。ヤマハからのクルマの提案は、前々回、前回と続いてこれが第三弾となるCROSS HUB CONCEPT (クロスハブコンセプト)だ。
ー次はヤマハの、コンセプトカー。二輪ではなくクルマです。
難波「今回は、ヤマハがバイクも作っていますし、バイクを楽しく使うSUVっていうことで、こういう提案をしたんだと思います。バイクを斜めに積むことによって、荷台を長くしないでなるべく短くして、かつバイクの車輪を前方に突っ込めるようにダイヤモンド型のシートレイアウトにしています。そうすると、普通の2座2座の4人乗りよりも荷室の長さが稼げるじゃないですか。で、それでそういう4座にしてるんだと思いますよ。
ーこれはじゃあ、これまでのゴードン・マーレーさんのiStreamコンセプトとは違う話なんですか?
難波「ゴードン・マーレーさんのとはまったく違って、今回は今回で、改めて新しくヤマハの楽しい世界観っていうのかな、ワクワクする世界観を提案するために作ったものだと思います」
ーこれ、長屋さんっぽい所もあるんですか?(注:長屋明浩氏。トヨタを経てヤマハ発動機執行役員デザイン本部長)
難波「そうだな。意思表示が強いところかな。だって実際には、よく見てみたらわかりますけど、ダイヤモンド型にしたからって、バイクが2台クロスで積めるわけじゃないじゃないですか。片側だけでしょ。じゃあ、余ったところはどうするんでしょうか。こっち側(キャビン側)をダイヤモンド型にした意味がほとんどないでしょ。なるべくコンパクトにしようとしたのに、なんでじゃあ4人乗りにしなきゃいけなかったのってなるじゃないですか。あの4人乗りの後ろのシート見てもらうとわかるんですけど、ほぼ座れないんですよ。しかもこっち(荷台)、2台積めますって、これ本当にこの意味で2台って言っているんだとしたら、ちょっとこれは、だまされたって感じ、しませんか? でしょ。2台っていうとバイクがクロスに積めて、そのフロントフォークが絶対前にいくんだ、みたいに考えたいじゃないですか。でもそうじゃないし、じゃあ、縦に2台積めるかっていったら、積めないですよね。しかも2台積みなら2シーターでもよかったですよね。だから提案はよくわかるし、こういうクルマの使い方あるよねっていうのもわかる。こんなクルマ、楽しいね、っていう意図もわかるけど、じゃあなんでこれをヤマハは提案したのかなって思ってしまいますよね。
ーヤマハもずっと4輪車の提案しているじゃないですか。それは最後はやっぱり4輪作りたいんですよね?
難波「どうなんだろう。本当なのかどうかわからない。」
ーこれが市販される可能性は、どう思いますか?
難波「ゼロでしょうね」

ーここに作った人がいます(笑)
CROSS HUB CONCEPTのデザイナーをインタビューしていたデザインライターの古庄氏が声を上げた。
難波「(開発の方が目の前にいてもペロっと舌を出し、お構いなしに続ける)だってね、この全幅知ってますか? これはかなりでかいですよ。なんでこの大きさで、ここまでやって、こういう中途半端なことをやって、っていうモデルにする必要がどこにあるの? って。だから、楽しい世界観とかやりたい気持ちとか、ヤマハのブランドって楽しいこと考えてるよね! ワクワクするよね! っていうのはわかります。だから、そこは、オッケー」
ーでも、遊び過ぎ?
難波「っていうか、ちゃんと解説してくれっていうと、どんどんマイナスなところも出てきちゃうよっていうところ。そこまで言っちゃいけないかもしれないけど」
ー楽しいっていう表現なんだからっそれでいいでしょ、っていう感じでしょうか。
難波「そうそう。でも、ボクはクルマづくりをずっとやっていたので、ついつい、じゃあこれ誰がどうやって積むの、とか、そこまで考えちゃうわけですよ。誰が座ると思う?」
ーというか、まず後席に入れないですよね。
難波「入れない。多分これ(フロントシート)、動くと思うんですけど、シートが前に動いて後ろに入れると思うんです。けれど、後ろ入った人どうするんですかね、脚。広げられないですよ、まったく。せいぜい子どもでしょ。お父さんと子ども3人?」
ーそんなシチュエーション、なかなかないですよね。
難波「で、この真っ正面見たときの感じ。大きいですよ大きい」
ーアメリカンな感じ?
難波「なので、メーカーとして商品として提案しているものではないですよ。世界観展示ですね。うん。だから、それであればオッケーかな」
ーあそこにこう、開けるじゃないですか。
とキャビンと荷台の間の空間を指す。
難波「それはだから、中がダイヤモンド型のキャビンだっていうことを言いたいために、コンセプチャルにやっているだけのように思いますよ」
ープラス、斜めに、モノを積める、長いモノを積むときは斜めにっていうことですよね。
難波「そうそう。だから、まあ、思いついたアイデア。でもまあ、ヤマハ楽しいねって、 済ませてあげればいいんじゃないかと思いますけど」
古庄「まぁまぁまぁ、まだヤマハは自社の4輪の実績がないブランドだから温かく見守ってあげましょうよ」
難波「だから温かく見てあげて、ヤマハが楽しい世界観を提案している、テーマとしてオッケー、でいいんじゃないですか? って言っているんです。ヤマハが自分のところのバイクを使って、クルマで遊びに行ってっていうの、すごくアリだと思っていますよ。だから、それはオッケー! でも、真面目に見ていくと、なんでこんなことする必要があるの?って。全然、わからない」
ーじゃあ、デザイナー側からの話を古庄さん、どうぞ。
古庄「パッケージですよ。パッケージレイアウトの話ですけど、ようするに全長4500mmくらいなんですよ、ピックアップトラックとしてはものすごいコンパクトなんですよ、これ」
ーえ! これ、ピックアップトラックなんですか? そもそもそこが、わかってなかった!
難波「そうですよ。ピックアップですよ」
古庄「コンパクトなピックアップトラックだけれども、大人4人がちゃんと乗れて……」
ーえ、乗れるの?これ。
難波「乗れないでしょ」
古庄「だから、ダイヤモンド配置にして、それは何かって言ったら、左右の荷台長は長く取れる、真ん中は短くなっちゃうけど。そうすると、バイクみたいな長いものも傾けることで積めるようになる、と。だから、両立を目指しているんですよ。コンパクトサイズと、長いものを積みつつ、人間もちゃんと乗れる。こういうのはどうでしょうって提案している、と。別にこれを商品化しようとは思っていない。まあ、無理だと思いますけど」
ーヤマハのデザインとして、デザインライターとしてはどうですか?
古庄「アプローチとしてはアリだと思います。それで、なるべく荷台を大きくとって、長そうに見せるところも、フレームとキャビンの間に抜きを設けて、コンパクトさと長さ感を両立させようとしている。で、実際その抜きの部分にちょっと長いものの鼻っ面差し込めば、実際に積めるようになる。っていう、そういうアイデアです。だから、荷物の積み方も、バイクに近いんですよ。バイクの後ろに椅子よりも幅の広い荷物を載せるとか、あるいは長いもの、後ろちょっとはみ出しちゃうけど、バンドでしっかり固定すれば運べるようになるとか。だから、荷物の積み方としては、バイクの積み方がしっかり活きています」
ということで、ヤマハのCROSS HUB CONCEPTに関しては、意外と辛口の難波さんでした。
次は、スズキのブースに向かいましょう。