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【スズキ・エスクード1.4ターボ試乗】トヨタC-HRに強力なライバル出現。これはSUVのスイフトスポーツだ!


ハンガリー子会社のマジャールスズキ社で生産されたものが日本へ輸入、販売されている現行4代目スズキ・エスクード。2015年10月の国内発売以来「1.6」のみ設定されていたが、今年7月に待望の高性能モデル「1.4ターボ」が追加された。果たしてその走りとは。

スズキ・エスクード1.6。ホットハッチさながらの1.4ターボに対し、外観も落ち着いた雰囲気にまとめられている

先代3代目ではビルトインラダーフレームを持つFRベースの本格SUVだったスズキ・エスクードが、2015年10月に国内販売が開始された現行4代目では、SX4 S-クロス譲りの新世代Cセグメント用FFプラットフォームを採用。車重が約400kg軽量化されながらも、高いボディ・シャシー剛性を得て、路面と速度域を問わずしなやかな乗り心地とハンドリングを備えている。




だが、その極めて高いシャシー性能に対し、デビュー当時唯一設定されていたのは、117ps/6,000rpm・15.4kgm/4,400rpmというスペックのM16A型1.6L直4ガソリンNAエンジンと6速ATを組み合わせる「1.6」のみ。4WD車で1,210kgという車重以上にシャシーがパワートレインの性能を圧倒的に上回る印象を、特に高速道路やワインディングで乗り手に与えていた。

K14C型1.4L直噴ターボエンジン

しかしながら、待望のK14C型1.4L直4直噴ガソリンターボ「ブースタージェットエンジン」と6速ATを搭載する高性能グレード「1.4ターボ」が、今年7月26日に追加された。




このエスクード用K14C型はレギュラーガソリン対応ながら、最高出力は19psアップの136ps/5,500rpm、最大トルクは実に6kgmアップの21.4kgmを、2,100~4,000rpmの低回転かつ広範囲で発生する。




6速ATが静粛性および燃費向上のため、1・2速を中心にギヤ比が高められているのが懸念材料ではあったものの、1.6の致命的な弱点を解消してくれるパワートレインがようやく搭載されたものと、試乗する前から期待値は最高潮に達していた。




実際に試乗すると、その期待は、良い意味で裏切られることになる。

K14C(赤線)とM16A(青線)の性能曲線。全回転域でパワー・トルクともK14Cが上回り、かつ低回転域の広範囲で20kgm超のトルクを発生することがうかがえる

「走り出した瞬間から、その良さが体感できる」とは、やや誇張気味に使われることが多い宣伝文句だが、このエスクード1.4ターボにその通例は当てはまらない。1,500rpm時点で20kgm近いトルクが生み出されるため、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に余裕のあるを加速感を得られる。しかもそのレスポンスは決して敏感すぎず、ペダルストロークとエンジン回転に対してリニアに加速していくため、一般道を流れに沿って走る時でも意のままに速度をコントロールできる。




1.6が苦手とする高速道路やワインディングではどうか。高速道路では、トルクのみならずパワーも全回転域で大幅にアップした効果は大きく、追い越し加速で低回転域から高回転域まで回しきっても、ダウンサイジングターボにありがちな「低回転域の高トルクに対し高回転域のパワーが少なく、高回転高負荷域ではむしろかったるい」ということはない。むしろ回転が上がるほど、ターボながら伸びの良い加速とともに甲高い快音を響かせるため、不必要に高回転域を多用したくなるほどだ。




そして、ワインディングに持ち込むと……「これは楽しい!」と、あまりにもシンプルな感想を、ただただ叫び続けるより他になくなってしまった。

ブラックに塗装された17インチホイール。タイヤは215/55R17 94Vのコンチネンタル・コンチエココンタクト5

この1.4ターボ、1.6に対するシャシーの変更点はない。全長×全高×全幅=4,175×1,775×1,610mm、ホイールベース2,500mm、車重1,220kgと、SUVとしては軽量コンパクトかつ低重心なパッケージもほぼ同じ(車重のみ1.6L NAは1,210kg)で、215/55R17 94Vのコンチネンタル・コンチエココンタクト5を履くという点も同様だ。




直進では、低速域でひび割れた路面を走っても不快なフロアの振動は発生せず、高速道路で継ぎ目を踏んでも強い突き上げ感はなく、フラットライドに終始する。そしてコーナリング時は、ゆっくりとロールしながらリニアにヨーが立ち上がり、路面の凹凸をしなやかにいなしながら弱アンダーステアを維持するという、現行エスクードがデビュー当初から備えていた理想的な乗り心地と操縦安定性を、そっくりそのまま受け継いでいる。

6速ATのシフトレバーと「オールグリップ」のモード切り替えダイヤル・スイッチ

このシャシーと電子制御4WD「オールグリップ」に、3,000rpm程度まで回せば急坂も楽に上れる高トルクかつ、高回転域の伸びもサウンドも心地よい1.4Lターボエンジンが組み合わされることで、ワインディングでは上り・下り問わず抜群のコントロール性を獲得。「オールグリップ」を「SPORT」モードに切り替えるか、パドルシフトを駆使して6速ATをマニュアル変速させて走ればホットハッチ、それも本場欧州の上質なそれに匹敵する走りの世界を堪能できる1台に仕上がっていた。

ブラック塗装のアルミホイールやシルバーのルーフレールなどでスポーティに仕上げられたエクステリア

このエスクード1.4ターボには、走りのみならず内外装にも、ホットハッチのテイストが盛り込まれている。




エクステリアには、5スロットタイプのメッキフロントグリル、ブラック塗装の17インチアルミホイール、レッドプロジェクターカバー付きLEDヘッドランプ、高輝度シルバー塗装のLEDサイドターンランプ付きカラードドアミラーおよびルーフレールを装着。

赤のアルマイトリングやステッチでスポーティに仕上げられた運転席まわり

室内には、レッドステッチ入りのステアリングホイール・シフトブーツ・シート、アルマイトレッド加飾入りのメーターリング・エアコンルーバーリング・センタークロックガーニッシュ、ステンレス製ペダルプレートが装着された。




この戦闘ムード満点の内外装はドライバーをその気にさせ、道行く人から「格好良いね、これ。何ていうクルマ?」と声を掛けられることも一度ではないほど目を引くものとなっている。




だが、室内に目を移すと、1.6ではさほど気にならなかった点が、この1.4ターボでは目に付くようになっていた。それは、1.6L NAで2,343,600円、1.4ターボで2,586,600円という価格に対し、運転席まわりの質感が低いことだ。

後席にも本革×スエード調の生地が用いられ、リラックスした姿勢を取っても滑りにくい
黒を基調に赤のステッチが入れられた本革×スエード調シートはホールド性向上にも貢献


充分なサイズが確保された本革×スエード調シートこそ質感が高く、生地も滑りにくいためホールド性も良好だが、アッパー・ロアともハードパッドのインパネは太陽光に対して平板なツヤを返し、シルバーのガーニッシュがそれに拍車を掛ける。そしてアルマイトレッドのリング類はいかにも走り屋のクルマのようで、クルマに興味がない他人を乗せるのがためらわれてしまう。

1.4ターボにのみ装着されるステンレス製ペダルプレート

また、1.4ターボにのみ装着されるステンレス製ペダルプレートは、滑り止めのゴムが表面にないため滑りやすい。しかも、ペダルの取り付け位置が高いため、足のサイズ25.5cmの筆者が細身で裏底の溝が浅いドライビングシューズを履いて運転すると、信号待ちで長時間ブレーキペダルを踏み続けようとしても途中で滑り落ちてしまい、クルマが前に進んでしまうことが何度かあった。

フロントグリル中央に装着されるミリ波レーダー

なお、フロントグリル中央のミリ波レーダーによる衝突被害軽減ブレーキ「レーダーブレーキサポート2」およびACC(アダプティブクルーズコントロール)は1.4ターボにも標準装備されている。前者は聞き取りやすい警告音と早めのブレーキ作動で事故防止に役立つが、後者は車間距離を最も短い設定にしても間隔が大きく、前走車がいなくなった後の再加速もタイミングが遅いため、意のままに走れずかえってストレスが溜まることの方が多いように感じられた。




これらの点は、来年にも実施されるというマイナーチェンジの際にぜひとも改善してほしいところだが、それでも極めて上質かつ楽しさに満ちた走りを持つSUVであるという事実は変わらない。このエスクード1.4ターボに試乗したのは新型スイフトスポーツの発表前だったが、「これはSUVのスイフトスポーツだ!」と思わずにはいられない、そんなキャラクターの持ち主だった。

トヨタC-HR

しかしながら、走りの楽しさと上質感においては、昨年12月に発売されたトヨタC-HRが、このコンパクトSUVクラスですでに不動の地位を確立している。そこでエスクード1.4ターボと比較試乗してみると、明らかになったのは走りの違いよりもむしろ、SUVとしての性格の違いだった。

トヨタC-HRの225/50R18タイヤ。写真の銘柄はミシュラン・プライマシー3

C-HRは全長×全高×全幅=4,360×1,795×1,550mm(ハイブリッドFF車。ガソリン4WD車は1,565mm)、ホイールベース2,640mm、車重1,440kg(ガソリン4WD車は1,470kg)と、エスクードに対し低重心かつロングホイールベースだが200kg以上重い。タイヤサイズはベーシックグレードが215/60R17、上級グレードが225/50R18となっている。

トヨタC-HR・1.8L直4+ハイブリッドFF車のハイブリッドシステム

パワートレイン・駆動方式はシステム出力122psの1.8L直4+ハイブリッドのFF車と、116ps/5,200-5,600rpm・18.9kgm/,500-4,000rpmを発する1.2L直4直噴ターボ+CVTの4WD車を設定するが、いずれも動力性能や官能性より燃費でエスクード1.4ターボに勝るユニットだ。

トヨタC-HRに採用されたTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)

リヤにダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用したトヨタC-HRのシャシー

C-HRを走らせると、TNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)による低重心パッケージにヒップポイントの低さも加わり、エスクードよりも重心が低いことが即座に体感できる。だが、ザックス製ダンパーやウレタン製アッパーサポート緩衝材、ダブルウィッシュボーン式リヤサスペンションを用いて実現したその乗り心地とハンドリングは、あらゆる路面の凹凸をしなやかにいなし、コーナリング時はゆっくりとロールして、乗員誰もが不安感を覚えることなく長距離長時間乗り続けられるという、エスクードと甲乙付けがたいものだった。

トヨタC-HRの後席は絶対的な空間こそ必要充分なものの視界が狭いため閉塞感が強い
サイズが大きくサイドサポートは強めでホールド性が高いトヨタC-HRのフロントシート


一方でC-HRは、クーペのように低重心な走りとプロポーションを実現するため、犠牲にされた面も少なくない。ベルトラインは高く、ルーフライン後端は低く、ガラスエリアは小さく設計された影響で、室内は閉塞感が強く、視界も狭い。特にリヤドアガラスが小さく、リヤクォーターガラスに至っては存在すらしないため斜め後方の死角が大きく、レーンチェンジや車庫入れ、また後席から降りる際に少なからず気を遣う。

前衛的なデザインながら操作性に優れるトヨタC-HRの運転席まわり

ただしインパネやシートの質感は極めて高く、前衛的なデザインながら操作性やホールド性にも優れるため、内外装のデザインと質感を重視するならばC-HRに軍配が上がるだろう。

トヨタC-HRのリヤまわり

端的に言えばC-HRは「SUV風の5ドアクーペ」であり、後席はあくまで荷物置き場か必要に迫られたら人を乗せるためのものでしかない。その本質は、夫婦や恋人同士がドライブを楽しむためのデートカー、もしくはオーナー一人が走りとスタイルを楽しむためのドライバーズカーである。




対するエスクードは視界も室内・荷室空間も広く、3人以上のグループが移動中の景色や会話を楽しみながら、旅行やアウトドアへ向かうという、SUVに本来求められる機能を十全に備えている。内外装は無骨に過ぎるきらいがあるものの、クロスオーバーSUVばかりとなった今となっては、エスクードは走りの楽しさと快適性を兼ね備えた貴重な本格コンパクトSUVという、他車にない強烈な個性の持ち主として高く評価したい。

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