わたしの半生などを聞いたところで、読者各位は一銭の得にもならないし、得るものもさほど無いはずだ。
だが外車王SOKEN編集長M氏は「うるさい黙れ。それでもお前の半生を書け」というので、雇われライターとしては仕方ない、書くしかない。
だがこんなわたくしにもいちおう「ライターとしてのプライド」みたいなものはあるため、あまりにも無価値な文章で電脳空間を埋めることにはいささかの抵抗がある。
それゆえ、今回の文章は「ライトなビジネス書形式」にしたいと思う。
そういった類の書籍はあまり買わないため詳しくはないのだが、わたしが知る限りにおいては、ライトなビジネス書あるいは自己啓発本は、章の終わりごとに「この章のまとめ!」みたいな短文がいちいち付いており、そこを読めば、本文は読まないでも内容をまあまあ理解できる仕組みになっている。
その形式を真似ることで、何の役にも立たない私の半生記が、ごくわずかであっても読者各位のゼニ儲けや幸福のために役立つであろうことを祈りたい。
では、はじめよう。
第1章:貧困
わたしは1967年11月、東京都杉並区にて生まれた。男ばかりの4人兄弟の末っ子であった。自営業を営んでいた父は、わたしの兄たちの少年期や、わたしが物心ついた頃あたりまでは羽振りが良かったようだ。「自家用車」というものが宇宙船並みにレアだった時代にも、我が家にはトヨタ パブリカがあった(わたしはそれを知らないのだが、写真がある)。
そして、わたしが「西田幼稚園」というエリート養成学園に通っていた頃の自家用車は、トヨタ クラウンであった。クルマに詳しくないので型式名とかは知らないのだが、「クジラ」という通称を持つアレである。
だが、父が営んでいたビジネスはいつしか暗礁に乗り上げたようで、詳しい事情は知らないのだがある日突然、クジラのクラウンは「トヨタ コロナ」という小さなセダンに変わっていた。そして杉並区立西田小学校という、これまた超エリート養成校に入学するにあたり、わたしは新品のランドセルを買ってもらうことができなかった。そのため兄のお古である黒いランドセル(少々キズ有り)を背負って、エリート校の入学式に臨んだ。