過日。某県某所の某ポルシェセンターにて、某ベテランテクニシャン氏(メカニック氏)と話す機会があった。その際に、「あ、そういえば」と思い出したひとつの質問を氏にぶつけてみた。
ティプトロニックという「異常な」トランスミッション
その質問とは「ボク、964とか993のティプトロニックがぶっ壊れたって話を聞いたことがないし、実際ボクが乗ってた964カレラ2(当時10万km超)のティプトロもぜんぜん大丈夫だったんですが、これって『ティプトロニックとはほとんど壊れないものである』っつー理解でOKですか?」というものだった。
いちいちメモは取っておらず、また録音もしていない会話であったため、下記はテクニシャン氏の正確な返答そのもではない。しかし大意は以下のとおりであった。
「そう言われてみると私も、そして私の今の同僚や過去の同僚も、ティプトロの修理ってほとんどやってないですよね(決して“ゼロ”ではないですが)。なにせ『ティプトロの不調が原因での入庫』っていうのがそもそもレアですから。そう考えると……そうですね、軍曹さんがおっしゃる『ティプトロは壊れない』という認識は、絶対ではないにしても『かなり正しい』とは言えるでしょう」
やはりそうだっであったか……。あのオートマチック・トランスミッションは本当に異常である。良い意味で。
中古車記者も長いことやっていると、数年に1回か2回ぐらいは必ず「ATの状態がいかにもヤバそうな中古車」に遭遇するものだが、ことポルシェ911のタイプ964とタイプ993に限っては、過去22年間の記者生活のなかで一度もその経験がない。
「メルセデスなどの一般的な車種と比べればポルシェ911は数(母数)が少ないから、故障してる個体に当たる確率がそもそも低いだけだろ?」という意見もあるかもしれないが、そこらへんの数字は脳内で補正をかけたうえで言っているのだ。「なぜか知らんけど、ティプトロは壊れない」と。
まあ今「なぜか知らんけど」と言ったが、実際は前出のテクニシャン氏からすでに話は聞いている。「中身が“完全ポルシェ仕様”になってるティプトロだから壊れない(あるいは壊れにくい)」ということだ。
これまた会話の正確な再現ではないが、テクニシャン氏は言った。