本格的な春の訪れを告げる桜の開花。毎年、開花予想が話題になりますが、その開花予想に一喜一憂する方が多いかもしれません。一見気まぐれのような開花時期ですが、実は桜は緻密なメカニズムに従って花を咲かせています。今回は、その桜の開花のヒミツに迫ってみましょう。
冬の眠りから目覚める「休眠打破」
桜の開花が待ち遠しくなる3月。毎年3月下旬頃になると、日本列島の各地から桜の開花の便りが連日のように届くようになります。暖かくなれば桜が自然と開花すると思われるかもしれませんが、実は桜の開花に至るまでは、様々なプロセスを経ているのです。
桜は、夏になると翌春に向けて花芽を形成し、冬に入る前に、厳しい寒さから身を守るため、「休眠」という状態に入ります。この時期は、一見枯れ木のようにも見えます。この休眠状態を解除(打破)するためには、一定期間、低温にさらされることが必要となります。寒さにさらされることで花芽は休眠から目覚め、これを植物学では「休眠打破(きゅうみんだは)」と言います。冬に十分な寒さを経験した花芽は、春に向けて開花の準備を始めますが、冬が暖かすぎると休眠打破がうまくいかず、開花が遅れたり、花の数が少なくなったりすることがあります。
開花のカギを握る”気温”
桜の開花には、冬の低温による休眠打破と、春の暖かさによる成長促進が不可欠です。冬の寒さを乗り越え、休眠打破を終えた桜は、春の暖かさを感じて成長していきます。気温の上昇とともに、花芽は膨らみ始め、開花へと向かいます。この成長を促進する上で重要なのが“気温”です。
ソメイヨシノの開花予想は、シーズンが近づくと気象会社各社から発表されます。桜の種類や地域によって、開花に至るまでの条件は異なりますが、実はこの”気温”を使って、自分でも桜の開花をある程度予測することができるのです。それが「600℃の法則」と呼ばれるものです。これは、2月1日以降の毎日の最高気温を積算し、その合計が約600℃に達すると開花するという経験則です。
例えば、2月1日以降の気温が毎日10℃だと仮定しましょう。そうすると、60日後(約2か月後)に積算温度が600℃に達し、開花するというおおまかな予想をたてることができます。ただし、あくまでも600℃の法則は経験則であり、絶対的なものではありません。実際の開花日は、日照時間や天気などによっても影響され、ずれることがありますが、600℃の法則は桜開花のひとつの目安と言えそうです。これは近所のソメイヨシノでもこの600℃の法則を使ってある程度予測が可能です。家の窓から見える桜の木や、知る人ぞ知る近所のお花見スポットの開花時期を自分で予想してみるのもいいかもしれません。桜の開花もより一層楽しみになりそうですね。
開花予想の要となる標本木とは?
では実際に、気象庁が「桜開花」の発表をする際の条件はどのようなものなのでしょうか。
全国各地に、気象庁が指定した「標本木(ひょうほんぼく)」と呼ばれるソメイヨシノがありますが、これらの標本木は、周りの環境の影響を受けにくく、代表的な桜の生育状況を示すものとして選ばれています。例えば、東京の標本木は靖国神社に、京都は二条城に、大阪は大阪城公園内にあります。
開花予想は、この標本木の開花状況に基づいて発表されます。標本木に5~6輪以上の花が開いた状態を「開花」と定義し、気象台の職員が目視で確認します。まれに、幹や根から直接花が咲くことがあり、これを「胴咲き」といいますが、通常の開花とは異なるプロセスによると考えられていることから、標本木で開花が発表される際は、「胴咲き」の桜は含めません。「胴咲き」とは、まれに幹から直接花が咲いているもののことです。枝の先端に咲いている桜のみを数え、それが5~6輪確認されると、「開花」となるのです。
お花見の計画を
毎年、桜の開花の時期になると、東京の靖国神社では各メディアが集まり、気象台の職員の開花の発表の様子を、記者や一般の方々が固唾を飲んで見守る様子が中継されています。多くの方が桜の開花にいかに関心を持っているかが分かりますね。
桜の開花を心待ちにする方も多いことでしょう。tenki.jpでは2025年の桜の開花・満開予想や全国各地のお花見スポットをご紹介しています。ぜひチェックをしてお花見の計画を立ててみてはいかがでしょうか。