一般人にあまり親しみのない登山用語のひとつに、「シャリバテ」という言葉があります。シャリ(飯)が足りなくてバテることを意味しますが、いわゆるハンガーノックと呼ばれる状態で、登山中には絶対に避けるべき状況でもあります。
そこで今回はシャリバテ対策を意識した行動食について、わかりやすく解説していきます。おすすめの行動食も合わせてご紹介しますので、少し長い距離を歩く登山を計画しているという人は、ぜひ参考にしてください。
高カロリーで持ち運びしやすいものを選ぶ
登山は長時間行動することが多く、想像以上にエネルギーを消費します。これを補うのが行動食ですが、基本的には行動食は何でも構いません。カロリーオフの食べ物では困りますが、普段の食事やおやつなどで食べているものであれば、大抵のものは行動食になります。
ただ、登山の快適さは荷物の重さに左右されるので、できるだけ荷物の量を減らすためにも行動食は必要なエネルギーを効率的に補給できるものが理想です。ただし、単純にカロリーが高ければいいというわけではありません。
たとえばチョコレートは高カロリーで、エネルギー補給だけを考えれば優秀な行動食になりますが、暑さに弱いため、春から秋にかけては持ち運びしにくいといった欠点があります。このため、気温がかなり低いときでないとチョコレートは行動食には適しません。
高カロリーであることはとても重要なのですが、持ち運びしやすいかどうかも同じくらい大切です。単純にカロリーの高さだけで選ぶのではなく、個包装されているなどの持ち運びしやすいものがおすすめです。
エネルギーとして利用できるまでの時間も考慮しよう
食べ物はそれぞれ、エネルギーとして利用できるまでの時間が異なります。このため、行動食を選ぶときには、どれくらいの時間でエネルギーになるのかを考えておく必要があります。たとえば砂糖はお米や小麦などの糖質よりも素早くエネルギーに変えることができます。
このため、登山中の行動食には砂糖を使ったものを選ぶのが理想です。ただ砂糖の甘さが苦手という人もいますよね?その場合には、無理にそれらの行動食を選ぶ必要はありません。ご飯やパン、さつまいもなどの糖質を多く含んだもので作られた行動食を選んでOKです。
ただし食材によっては、食べてから吸収するまで3~4時間かかることを意識しておく必要があります。たとえば往復で6時間の登山コースを歩く場合、おにぎりで補給するなら、歩きはじめて1~2時間後くらいまでに食べ始めなければ、摂取したカロリーをエネルギーにできないまま下山することになります。
基本的には好きなものでできた行動食を選んでもいいのですが、選んだ行動食がどれくらいの時間でエネルギーとして利用できるのかを考えて、登山中の補給計画を立てるようにしてください。
登山でおすすめの行動食5選
ここまでの説明で行動食の選び方について把握できたかと思いますが、もっと具体的に知りたいという人もいますよね。そのような人のために、ここではおすすめの行動食を5つご紹介します。
・おにぎり
・ナッツ類
・ゼリー飲料
・スポーツようかん
・ドライフルーツ
最もおすすめなのは「おにぎり」です。すでにお伝えしましたように吸収されるまでに時間がかかるというデメリットがあるものの、それだけ腹持ちがいいというメリットがあります。ナッツ類も同じ理由でおすすめです。
ベースとなるのがおにぎりとナッツ類で、それに加えてゼリー飲料やスポーツようかんを用意しておきましょう。これらは吸収時間が短く、比較的すぐにエネルギーに変えられます。個包装されているので、使わなくても次回にまわせるのもおすすめの理由です。
ドライフルーツは水分が抜けている状態のフルーツですので、エネルギーも栄養も凝縮されており、それでいてベタつかないので持ち運びしやすいといった特徴があります。単体だと飽きてしまうので、ナッツと混ぜてオリジナルの行動食を作るのがおすすめです。
行動食も大事ですが朝ごはんもしっかり食べよう
ここまで行動食の重要性や選び方などをご紹介しましたが、行動食と同じくらい大切なのが朝ごはんです。登山の朝は早くなることが多いため、つい朝ごはんを抜いてしまいがちですが、空腹状態での登山開始はシャリバテのリスクが上がってしまいます。
エンプティランプが点灯した車でドライブするようなものだと考えれば、いかにハイリスクなことかわかってもらえるかと思います。どうしても朝ごはんを用意する時間がないなら、前日のうちにおにぎりを用意しておき、入山するまでに食べておきましょう。
何を食べるのかにもよりますが、おにぎりなら2~3個を目安としてください。1個だけですとすぐにエネルギー不足になってしまいます。もちろん、無理して一気に食べる必要はありません。朝からたくさん食べられないという人は、数回に分けて食べておきましょう。
もちろん朝ごはんをしっかり食べたからといって油断せず、きちんと行動食も用意してください。言うまでもありませんが、万が一に備えて非常食を用意するのも忘れないでくださいね。