登山愛好家にとって冬はとても悩ましい季節です。寒さや積雪のリスクを考えると、冬は登山をお休みにしたい気持ちがありつつも、この季節だからこそ見られる風景があると思うとソワソワもしてきます。そうなると気になるのが、他の人が冬シーズンをどう過ごしているかですよね。
そこで今回は登山愛好家が冬の登山をどうしているのかについて、登山事情をご紹介します。周りに登山仲間がそれほど多くなく、この時期の登山をどう楽しめばいいのか迷っているという人は、ぜひ参考にしてみてください。
半数の登山愛好家が冬は低山登山を楽しんでいる
少し古い調査ですが、2012年にヤマケイオンラインが行った登山者の冬の活動に関するアンケートでは、約49%の登山者が「雪の降らない・少ない山域で登山を楽しむ」としています。冬は登山を休む人は10%で、登山を継続する人のほうが多いことがわかります。
しかも雪山登山をするという人は35%もいて、この季節ならではの登山を楽しんでいる人も少なくないことがわかります。SNSなどを見ていると、雪が降るタイミングを狙って山に登っている人もいますので、積雪は必ずしも登山者にとってネガティブな条件でないことも伝わってきます。
ただし雪山には普段の登山とは違ったリスクがあり、初心者が安易に挑戦するのはNG。それでもしっかりと経験を積んでいるのであれば、雪山登山はステップアップにもつながりますので、ぜひ機会があればベテランの登山仲間のサポートを受けながら挑戦してみてください。
もちろん、安全に低山登山を楽しむという選択肢もあります。山の楽しみ方は人それぞれで、必ずしも標高の高い山や百名山を目指すだけが登山ではありません。低山には低山の魅力がありますので、自分なりの方法で冬も登山を楽しみましょう。
●参考
登山者の冬の活動に関するアンケート
冬山の登山は風対策を徹底して行おう
雪山を登るにしても低山を楽しむにしても、冬に登山をする場合には最適な装備を揃えてください。冬に適した装備というと防寒対策をイメージするかもしれませんが、登山の場合はそれだけでは不足で、強風に対する備えも必要になります。
気温の低さそのものも体温を奪っていきますが、それ以上に体を冷やすのが風です。低山だからといって3シーズン用のウェアをチョイスすると、歩いているうちはいいのですが、休憩しているときなどに風がウェア内に侵入し体温を奪っていきます。
風を通しにくいウェアを選ぶのはもちろんのこと、末端が冷えないようにグローブやソックスも防風対応のものを選んでください。そうなると今度は汗をかくことになるので、汗冷え対策が施されたインナーウェアを着ることも忘れないようにしましょう。
装備を揃えるにはお金がかかりますが、ウェアは命を守るためのアイテムですので、ここは妥協せずに必要なものはきちんと揃えるようにしてください。むしろ、装備を揃えられないなら冬は登山をお休みにするか、ウォーキングを楽しみましょう。
冬はトレーニング期間に位置づけるのもおすすめ
平地でも雪が積もるような地域ですと、低山でも積雪があるため気軽に登山を楽しめないという人もいるかと思います。そのような場合には、冬はトレーニング期間と割り切って、登山シーズンに向けてトレーニングするのがおすすめです。
積雪がないなら体力づくりのためにジョギングするのもいいですし、スクワットや体幹トレーニングを1週間に2回行うことで、山を歩くときにも体が左右にブレにくくなり、効率よく登山できるようになります。
これまでよりも難易度が高い山に挑戦したいなら、階段トレーニングをしましょう。マンションやビルの階段の昇降を30分から1時間続ければ、かなり負荷の高いトレーニングになります。こちらも1週間に2回のペースで行ってください。
ここで大事なのはトレーニングだけで終わらせるのではなく、しっかりと栄養補給を行い、体を休めるということです。体力や筋力はトレーニングだけで向上するのではなく、適切なリカバリーを行うことで向上します。どれだけ忙しくても、きちんと休養を入れましょう。
冬は雪山も低山も「無理をしない」が基本
冬をどう過ごすかは登山愛好家ごとに違い、これが正解というものはありません。雪山に挑戦するのもいいですし、低山を楽しむのもいいでしょう。ご紹介したようにトレーニング期と割り切って、春以降に備えて鍛えるというのもありです。
ただ、いずれにも共通しているのが「無理をしない」ということです。しっかりと準備していても、危険を感じたら引き返すのはもちろんのこと、トレーニングをするにしても必要以上に追い込まず、無理のない範囲で行ってください。
高校生の冬山登山は原則禁止と2017年にスポーツ庁から通達されましたが、冬山はそれくらいリスクが高く他のシーズンの登山よりも危険度が高まります。挑戦するならリスク管理を徹底して行い、それが難しいなら無理な挑戦はしないように心掛けてください。
もちろん登山前には、山の天候や気温、風の強さなど、無理なく登山できる条件が整っているかも調べておきましょう。少しでも不安要素があるなら翌週以降に延期するなどして、可能なかぎりリスクを減らした上で山に向かってください。