夏の星座には、全天21の1等星のうち4つを見ることができます。夏の大三角を形成する「ベガ」「アルタイル」「デネブ」、さそり座の「アンタレス」です。梅雨の時期が終わると、見上げた夜空には夏の星々が輝き、季節の変化を感じることでしょう。
今回は、知っておきたい夏の1等星と代表的な星座についてご紹介します。
華やかな星空!「夏の大三角」と「天の川」
夏の星座のなかでいちばん明るい星は、こと座の1等星「ベガ」です。6月下旬から7月上旬頃は、深夜に天頂高く昇ります。まずは、青白く輝くベガを探してみましょう。ベガの左手上方には、はくちょう座の「デネブ」、その下方に目を移すと、わし座の「アルタイル」が輝いています。この3つの星が「夏の大三角」を形作っています。
ベガは七夕の「織り姫」、アルタイルは「彦星」で、2つの星の間を天の川が流れています。天の川は、夏になるとより明るく、はっきり見ることができます。月のない夜、できれば空気の澄んだ場所で空を見上げてみましょう。夜空の暗さに眼がなれると、南北に流れる天の川の姿が見えてくるでしょう。
ギリシャ神話、七夕の物語に彩られた夏の星座たち
天の川に沿って大きな十字に並ぶ星座は、翼を広げた白鳥の姿に見立てられた「はくちょう座」。白鳥の尾の位置にあるデネブをはじめ、くちばしにあたる二重星アルビレオなど、5つの明るい星が十字架の形を作っています。大神ゼウスが美しいスパルタの王妃レダに会いに行くために白鳥に姿を変えたというギリシャ神話が、はくちょう座の由来のひとつとされています。
はくちょう座の下の方には、やや小さな十字に並ぶ星々があります。翼を広げた鷲の姿を表した「わし座」です。中心で輝くのは、「彦星」のアルタイル。ギリシャ神話では、大神ゼウスが美少年ガニメデスを連れ去る時に変身した鷲の姿など、複数の物語が伝えられています。
天の川の右岸で輝く「こと座」は、ひときわ明るい「織り姫」のベガと平行四辺形に並んだ4つの暗い星からなる小さな星座。ベガは、たて琴にはめこまれた宝石ともいわれています。ギリシャ神話では、悲しい愛の物語「オルフェウスの竪琴」がよく知られていますね。
さそり座の赤い星「アンタレス」。火星との競演は約2年に一度
天の川の流れを南にたどると、地平線近くに天の川のいちばん明るい部分があります。そこに見えるのは、アルファベットのS字を描くさそり座。南の低空で赤く輝く「アンタレス」は、さそりの心臓の位置にあり、左下の方に曲がりながら並ぶ2等星や3等星の星々が胴体と尻尾にあたります。
アンタレスの名称は、「火星に対抗するもの」を意味する「アンチ・アーレス」に由来するといわれています。黄道上に位置するさそり座の近くを火星が通過することがあり、赤い火星と同じく赤いアンタレスが競うように並ぶことから名付けられました。次回の競演は、2023年12月です。
天の川を背景に輝く4つの1等星と星座は、夏の夜空最大の見どころ。星に魅せられた人々が紡いだ物語に思いを馳せながら、楽しんでみてはいかがでしょうか。
・参考文献
『アストロガイド 星空年鑑 2022』 アストロアーツ
・参考サイト
アストロアーツ「星空ガイド」
88星座図鑑