残暑お見舞い申し上げます。お盆も送り火を残すのみとなりました。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で全国で送り火などの盆送りのイベントも縮小して開催されています。帰省できなかった方も多いのではないでしょうか。
8月は命について考える機会が多く、改めて供養と祈りにまつわる「九品(くほん)」のお話しをしましょう。
祈りは魂の救済?
彼岸・盆・命日など、亡くなった方を供養する節目はいずれも亡くなった方を悼み「成仏(じょうぶつ)」を祈るものです。仏壇やお墓参りの際に唱える「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」は、奈良時代に広まった阿弥陀如来信仰における魂の救済の念仏です。生きている間に良い行いを重ねて仏教で言う「徳を積む」ことができた人はもちろん、阿弥陀如来様は悪行を行った人さえも最期の時に悔いて祈りを唱えれば救ってくださるということで多く人に広まりました。
「九品往生(くほんおうじょう)」とは?
奈良県の當麻寺に重要文化財「当麻曼荼羅 貞享本(たいままんだら じょうきょうぼん)」が納められています。曼荼羅図の下段に、上の上から下の下まで9つに分けられた「品」とそれぞれに相応しい来迎図が描かれています。徳を積んだ人から悪行を行った人まで、どのような最後を迎えるのか来迎図により表されます。
その後、中将姫の寄進で蓮糸綴織曼荼羅が制作され、さらに極楽往生の縁起絵巻が生まれてからは、當麻寺で当麻曼荼羅を本尊とし、法然上人の高弟で浄土宗西山派の祖である証空(1177〜1247)により信仰と普及が進み、全国に広まりました。
また京都の仁和寺には、九品別に阿弥陀如来の姿を描いた「九品曼荼羅」が『別尊雑記』全57巻に残されています。
実は「品格」という言葉は仏教用語でその徳の格を言うこと、それは日頃の行いによるのだということも分かります。
送り火、精霊流し…灯りに込めた祈り
今年は人が集うことが推奨されていないため、多くの地域で送り火や精霊(灯籠)流し、花火大会などが中止されています。寂しいことですね。
ご自宅に仏壇がある方は迎え火も送り火もご自宅で焚かれているかもしれませんが、実家に帰ることができなかった、または住宅事情により火を焚くことができない方は、線香花火で送ってみてはいかがでしょうか。
灯りは魂の光を象徴しているのでしょう。線香花火の最後の火種がポトリと落ちた時、亡き人の魂が帰ったのだと思えるのではないでしょうか。
【今年見ることができる送り火】
京都 大文字焼、箱根強羅 大文字焼などが規模を縮小して開催されます。お住まいの地域の送り火や精霊流しもTVやネット中継で見られるかもしれませんので確認してみてはいかがでしょうか。
(参考)
「浄土の美術」 内田啓一監修 東京美術