春夏秋冬、常にめぐる四つの季節の最後におかれた「大寒」。寒さの厳しさが「大」の字にこめられています。『暦便覧』には「冷ゆることの至りて甚だしきなればなり」と表しています。このところの寒さに冬本番を実感されている方も多いでしょう。寒い時にはその寒さゆえの楽しみもまたあるものです。寒さ極まるお楽しみを探してみませんか?
「大寒」の初候はフキノトウが顔を出す「欸冬華(ふきのはなさく)」です
雪の下に顔を出すあわい緑色が活力の息吹を感じさせるフキノトウ。フキの花の咲く前にのびた花茎が蕗の薹です。野山や道端など日当たりの良い場所に自生します。蕗の薹の魅力は大地に現れるぷっくりとした姿の存在感と、ほろ苦い味わいといえるのではないでしょうか? その苦みはカリウムとポリフェノール化合物のクロロゲン酸によるものだそうです。栄養成分ではビタミン類やカルシウムなどのミネラル、食物繊維も比較的豊富に含むので便秘に効果的とか。他にも咳を鎮める、たんを除く、健胃、浄血、毒消しなどが知られています。湯がいてアクを抜き、和え物、佃煮、味噌漬けと食卓を楽しくしてくれます。生のまま天ぷらにすれば、サクッとした心地よい食感が苦みを和らげてくれそうです。
「里山や下葉撥るる蕗の薹」 嵐雪
「白紙に包みし土産蕗の薹」 高浜虚子
「雪国の春こそきつれ蕗の薹」 西島麦南
歳時記では早春の季語になっています。寒さ厳しい時だからこそ、めぐりくる春のきざしへの期待がつのります。
♪押しくらまんじゅう、押されて泣くな♪ 懐かしくありませんか?
大勢でかたまってお互いに押し合いへし合い! はみ出されてしまったら、また固まりのどこかに入れて貰って押し競べをする遊び。「押されて泣くな!」の掛け声だけでたくさんの子供たちが一度に遊べる。道具も何も要らない、それでいてあったまる一石二鳥の冬の遊び、それが押しくらまんじゅうですね。まん丸い顔した子供たちがぎゅうぎゅうと固まっていたら、それはまるでお饅頭が押しあっているように見えたことでしょう。
「おしくらまんぢゅう路地を塞ぎて貧などなし」 大野林火
暖房のきいた暖かい部屋で過ごすようになってしまった今の子供たち、こんな遊びも知らないかもしれません。寒さはだれでも一緒、だから君も僕もみんなであったまろ! そんな子供たちの元気のいい声が聞こえてきたら嬉しいですね。
寒の味覚、寒ブリ! おめでたい時に食べるって、何故?
関東では、ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西では、ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ、と成長に連れて名前を変えていくので「出世魚」と呼ばれているのです。ブリとよばれるようになるまでにおよそ4年かかるとのこと。出世のスピードは速い? それとも遅い? どっちでしょうか。冬は脂肪がのって特に「寒ブリ」として賞味されます。福岡県では正月を祝うお雑煮に寒ブリは必須です。あご出汁に特産のかつお菜は必ずいれますよ。刺身・照焼・塩焼などで食べられていますが、たくさんの地域で出世魚のブリを使ったお祝いの料理が作られていることでしょう。味わってみたいものですね。
日本各地の沿岸に分布する回遊魚ですが、近年は養殖がさかんに行われ、養殖ブリをハマチと呼ぶそうです。あったまるのには鍋もいいかもしれません。
参考:
小学館『食の医学館』