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二十四節気「穀雨」。春の雨が降るたび新緑が輝くころ


関東では真夏日を記録したり、北国では雪が降ったり、全国的にさまざまな天候となった今週。本日4月20日から「春の最後の二十四節気「穀雨」となり、万物を潤す雨が降るころを迎えました。穀雨が終われば、風薫る初夏へ。まばゆい陽ざしに緑がきらめく季節の幕開けです。


春雨降りて百穀を生化すればなり。桜蘂(しべ)降る時節

思いがけず長きにわたって、花時を楽しめた今年の春。東北地方から北海道にかけては、これからがお花見の本番。奥州・三春の滝桜も満開になったとニュースで聞きました。

本日から二十四節気では「穀雨(こくう)」。「穀雨」とは、霞のようにけぶり降り、百穀を潤す春の雨のこと。「甘雨(かんう)」、「春霖(しゅんりん)」、「菜種梅雨(なたねづゆ)」。

様々な名で呼ばれる雨と、ときおり強く風が、枝に残った紅色の桜の蘂(しべ)をはらはらと降らせます。

そろそろ北国でも雪から雨に。種蒔きや田植えの時期が本格的に始まります。


穀雨の七十二候・初候は、「葭始生(あしはじめてしょうず)」

「豊葦原(とよあしはら)の千秋(ちあき)の長五百秋(ながいほあき)の瑞穂(みづほ)の国」

これは、「古事記」上つ巻に出てくる天照大御神の言葉。

新潮日本古典集成の注釈によると、

「邪気を払う葦の豊かに茂る原であって、いつまでも豊かな収穫が続く、みずみずしい稲のできる国、の意。稲を主食とする日本の国を祝福した表現である。葦原と水穂の国とが同格の「の」で結ばれているのは葦の生える所は稲も育つという経験によったもの」

とあります。このように古事記、日本書紀、万葉集にも出てくる「葦」。春には水辺にその新芽が出でて、「葭始生」のころには青々とした若葉が群落となった風景が見られます。

葦は水湿地に生える多年草。別名「ヨシ」と呼ばれますが、これは「アシ」という名が「悪し」に通じるので、これをきらって「良し」としたからだとか。すだれや屋根材に、燃料に、筆鞘や楽器など、古くから暮らしの中で使われてきた葦。紀州和歌の浦で山部赤人が詠んだ

~和歌の浦に潮満ち来れば潟を無み 葦辺をさして鶴(たず)鳴きわたる~

という歌も有名ですね。豊かな水辺に緑の葦が生え、鶴が大きな翼を広げて飛来していた古代。今ではなかなか見ることができない鶴が、ごく日常的に優美な姿を現してきたといういにしえの風景が、この歌からありありと浮かんでくるようです。


「満天星」と綴られる「ドウダンツツジ」は、「あしび」によく似た花

「これ、何の花ですか? スズランでしょうか?」

つい先日、こう問われた花の名は「ドウダンツツジ」。

ひっそりと地面近くで咲く草花のスズランとは違って、ドウダンツツジは落葉性の低木。春の芽吹きの頃、スズランによく似た白い小さなつぼ型の花を枝から垂らし、木全体をおおうほど一斉に咲かせます。

「ドウダン」という名の由来は、いにしえの宮中行事で使用された照明器具「結び灯台」から。この「トウダイ」に花の付き方が似ていることから「ドウダン」と呼ばれるようになったのだとか。漢字では「満天星」とも記し、空に輝く星にもたとえられる小さな花が、緑の枝葉に無数にきらめくのです。

ちなみに、このドウダンツツジとよく似たもうひとつの花が「あしび(あせび)」。秋に美しく葉を紅葉させるドウダンツツジとは違い、こちらは常緑。開花時期はやや早く、花は枝分かれせず房状に連なって咲きます。

桜が華麗に散り去った後も、慈雨に潤み、蕾から次ぎつぎと咲きほころぶ晩春から初夏の花たち。

花水木、山吹、躑躅、藤、そして百花の王・牡丹が、ふんわりと華やかに艶やかに開花すると、夏も近づく八十八夜。

風清かな茶摘みの時節がまもなくやってきます。

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