砂漠地帯として知られる中東のUAE=アラブ首長国連邦で、16日(協定世界時)、大雨になりました。この大雨の原因は、人工的な降雨であることは考えられにくく、雨雲が発達しやすい気象条件になっていたとみられます。
●ドバイで大雨 たった1日で年間降水量2倍超も
国土のほとんどが砂漠地帯として知られる中東のUAE=アラブ首長国連邦で、16日(協定世界時)、記録的な大雨になりました。ドバイ国際空港ではフライトの欠航や遅れが相次ぎ、都市ドバイでは幹線道路が浸水するなど被害が発生、復旧に時間がかかっているようです。
16日、ドバイ国際空港では、日降水量142.0ミリを観測しました。アブダビ国際空港では日降水量93.0ミリを観測、これは4月ひと月の平均降水量4.8ミリを大きく超えたばかりか、1年間の月平均降水量の合計の2倍を超える雨が、たった1日で降ったことになります。
●「人工的な降雨は今回の大雨の原因でない」という見解
レディング大学の気象学者マールテン・アンバウム教授によると、この地域では、雨が降らない期間が続いたあと、不規則に大雨になるのが特徴ではあるが、今回のような雨の降り方は非常に珍しいとのことです。
アラブ首長国連邦では、クラウドシーディング(cloud seeding)とよばれる人工的に降水量を増やすためのプログラムが運用されていることが知られていますが、レディング大学によると、クラウドシーディングには今回のような雨の降り方を引き起こす技術はなく、最近はこの地域でクラウドシーディングは行われていないとのことです。
地球温暖化に伴う大気中の水蒸気の増加が極端な降水現象を引き起こすことは、以前から予想されてきたとも言及しています。
参照:レディング大学 HP
https://www.reading.ac.uk/news/2024/Expert-Comment/Cloud-seeding-did-not-cause-Dubai-floods-expert-says
●アラブ首長国連邦付近 なぜ雨雲が発達したのか?
アラブ首長国連邦付近で雨雲が発達した原因は、16日、西から気圧の谷が近づき、低気圧などが発達しやすかったことや、アラビア海から湿った空気が流れ込んだなどの影響があると考えられます。
一番上の図は、天気現象が起こる対流圏の上層の状況です。アラブ首長国連邦付近では、矢印が外側を向いており、風は発散していることを示しています。これに関連して、地上の気圧をすぐ上の図でみると、アラブ首長国連邦付近は青色で、平年より気圧が低くなっており、風は収束していることを示しています。このエリアでは対流活動が活発になり、雨雲が発達したとみられます。