現在、インド洋では、正のインド洋ダイポールモード現象の特徴が現れつつあります。春から発生しているエルニーニョ現象と同時発生となると、2015年以来、8年ぶりです。
●正のインド洋ダイポールモード現象発生の可能性
春からエルニーニョ現象が発生していますが、エルニーニョ現象やラニーニャ現象とは独立した海洋の変動として、インド洋ダイポールモード現象が知られています。
正のインド洋ダイポールモード現象とは、インド洋熱帯域の海面水温が、南東部で平常より低く、西部で平常より高くなる現象です。その逆が負のインド洋ダイポールモード現象です。この現象は、おおむね夏から秋に発生します。
7月の平均海面水温の偏差をみると、インド洋熱帯域で、正のインド洋ダイポールモード現象の特徴が現れつつあります。8月になって、この傾向は顕著になり、この秋、正のインド洋ダイポールモード現象が発生する可能性があります。
エルニーニョ現象と正のインド洋ダイポールモード現象の同時発生となると、2015年以来、8年ぶりです。これらの現象は、いずれも世界の天候に大きく影響を与えるものであり、異常気象が発生しやすくなります。
参照:海洋研究開発機構ホームページ
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20230823/
●今回のエルニーニョ現象 典型的なパターンと違う
エルニーニョ現象は、南米ペルー沖で、海面水温が平年より高くなる現象です。
エルニーニョ現象発生時の典型的なパターンは、太平洋赤道域の西部で、海面水温が平年より低くなり、対流活動が不活発になります。すると、日本付近の太平洋高気圧の張り出しが弱まり、一般的には不順な天候が現れやすくなる傾向があります。
ところが、今回は、太平洋赤道域全体で、海面水温が平年より高くなっています。
上の図は、雲の発生や降水などの天気現象が起こる対流圏の上層で、8月23日まで30日間の状況です。青色は対流活動が活発、オレンジ色は対流活動が不活発なエリアにあたります。太平洋赤道域では、西部でも対流活動が比較的活発になっています。
今後、太平洋赤道域の西部では海面水温が次第に低くなることが予想されますが、正のインド洋ダイポールモード現象が作用することにより、海面水温が低くても対流活動は活発な状態が続くことが予想されます。
●今年の秋 高温傾向 秋雨前線の活動が活発になることも
太平洋赤道域の西部で対流活動が活発な状態は、この秋、正のインド洋ダイポールモード現象の発生などの影響で続く見込みです。このため、太平洋高気圧の日本付近への張り出しはまだ強く、本州付近に暖かく湿った空気が流れ込みやすいでしょう。
晩秋にかけて季節の進みはゆっくりで、高温傾向が続く見込みです。秋雨前線の活動が活発になる時期もありますので、雨の降り方に注意が必要です。台風シーズンも続きます。秋雨前線と台風の影響は、例年より長引く可能性があります。今後、最新の気象情報をご確認ください。