
<広島1-2ヤクルト>◇15日◇マツダスタジアム
ヤクルト高梨裕稔投手(34)が“シュート”を決めた。6回2死三塁、広島4番末包を147キロ内角シュートで遊ゴロに封じた。6回5安打1失点(自責0)で5月9日巨人戦以来、3カ月ぶりの2勝目に「チームが勝つことが一番ですが、個人としても勝ちが付いて乗っていけるのかな」と心地よい汗を拭った。
実は千葉・土気高では本気でサッカー部に入ろうと思っていた。茂原中野球部では3年間で公式戦通算1本だけ。その1本を県大会で放ち、ベンチは大盛り上がりだったが、試合は自らのトンネルで敗れた。「もうダメ」と自分に絶望した。高校進学と同時に友人から「一緒にサッカーやろう」と誘われた。小学校も中学校も休み時間も遊びはいつもサッカー。ほぼ心は傾き、両親にも伝えていた。
ただ「初心者からサッカーやるよりも。楽しく3年間やろう」と考え直し、ゆるく野球継続を決めた。転機は1年夏。同学年に投手が不在で、試しに全員が投球練習した結果、チーム最速120キロを出して転向を命じられた。すると秘めた才能が徐々に開花し、3年夏に最速142キロ。山梨学院大を経てプロ入りした。
地元の友人に会うと、鉄板で言われる。「あの時に、お前の人生を狂わせなくてよかったわ」。もうプロ12年目だ。【上田悠太】
▽ヤクルト高津監督(残り42試合でCS圏内の3位DeNAと8ゲーム差)「まだまだ何が起こるか分からないのが勝負の世界だと思う。前を向き、選手を信じて、みんなを信じて絶対に諦めてはいけない」