
<全国高校野球選手権:西日本短大付2-1聖隷クリストファー>◇15日◇2回戦◇甲子園
春夏通じて初出場の聖隷クリストファーが、力尽きた。2年連続8度目出場の西日本短大付(福岡)に1-2で惜敗。先発のエース左腕、高部陸投手(2年)が8回11安打9奪三振2失点と粘投も、要所で1本を欠いた打線が8安打で1得点と援護しきれなかった。2回戦で敗退したが、初戦で明秀学園日立(茨城)を下して聖地初勝利。県勢として18年の常葉大菊川以来7年ぶりの3回戦進出はならなかったものの、未来につながる1勝を持ち帰る。
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金属音とともに、大歓声が甲子園を包んだ。8回表に3番武智遥士捕手(3年)の左前適時打で1-1の同点として迎えた、その裏の守備だった。聖隷クリストファーのエース高部は、無死一塁の場面で、高校通算18本塁打を誇る西日本短大付のスラッガー佐藤と対峙(たいじ)した。
2球で2ストライクと追い込み、3球目。最大の武器を勝負球に選んだ。「高めの真っすぐで空振り三振を」。全力で腕を振った。しかし、142キロ直球を捉えられると、打球は無情にも、左翼を守る鈴木悠陽外野手(2年)の頭上を越えた。「力負け。同点に追いついてくれたのに自分が打たれた。勝たせられなかったことが、一番悔しい」と目を赤くした左腕。1点差の惜敗で夏が終わった。
初回、先頭の大島歩真内野手(2年)が二塁打で出塁。しかし、犠打失敗からの併殺で無得点に終わる。再び先頭が出塁した4回も犠打を決めきれず、好機はしぼんだ。上村敏正監督(68)は「私がもっとうまく導いてあげられれば勝てたのかなと思う。送れなかったことが、うちのパターンではなかった」。武智も「高部を助けてやれなくて悔しい」。持ち味の小技が影を潜めた打線は8安打1得点。つながりを欠き「あと1本」が出なかった。
チームは22年センバツで選外となり、昨夏は県決勝で敗れた。幾多の“壁”を乗り越え、たどり着いた聖地。1回戦でつかんだ初勝利の喜びだけでなく、この日、肌で感じた全国との差や課題も、実際に立ったからこそ得られたものだ。指揮官は「やっぱり、まだ目標が甲子園に出るってことだったんだと思う。そうじゃなくて、甲子園で戦うっていうチームにならないと」。高部も「ここに戻ってきたいと思う」と顔を上げ、土は持ち帰らなかった。
創部41年目の夏。聖隷が憧れの大舞台で「甲子園で戦う」チームへの1歩を、踏み出した。夢の続きは、高部やリードオフマンの大島、一時4番も任された江成大和外野手ら2年生の主力をはじめ、後輩たちに受け継がれる。【前田和哉】
▽左腕手術で登録を外れた逢沢開生主将(3年)に代わり、ゲーム主将を務めた渋谷海友捕手(3年)「すごく楽しかったし、この仲間がいなければここまで来られなかった。悔しかったけど、感謝の気持ちしかない。ここまで引っ張ってくれた逢沢にも感謝の言葉を伝えたい」
○…三塁側アルプス席で、聖隷クリストファーの熱のこもった応援が行われた。コンクールの県大会で9日の1回戦を“欠場”した吹奏楽部40人が参戦。駆けつけたOB、OGの有志とも息の合った演奏を披露し、盛り上げた。同部が大事にする言葉が「音即心」。部長の村岡瑞葉さん(3年)は「音は心の表れ、という意味が込められている。エールを音に込めて選手たちに届けたいと思う」と意気込んでいた言葉通り、最後まで勝利を信じてナインを後押しした。
◆初出場が姿消す 聖隷クリストファーが敗れ、今大会に出場した初出場校は叡明、未来富山、豊橋中央、綾羽に次いで5校すべてが3回戦に残れなかった。