
<全国高校野球選手権:仙台育英6-2開星>◇14日◇2回戦◇甲子園
待ってましたロマン砲! 仙台育英(宮城)が開星(島根)を6-2で破り、3回戦進出を決めた。5-2の8回、8番・高田庵冬(あんと)内野手(3年)が左中間越えにソロ弾をたたき込んだ。高校通算31号、甲子園では初の1発。身長183センチ、体重88キロと恵まれた体格を持つ右の大砲。走攻守の3拍子がそろう、頼れる「裏の4番」が存在感を見せつけた。
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手応えで確信した。左中間への当たりは良い角度。打球を見上げながら、右手でつくった拳を高く突き上げた。打った瞬間「いったな、完璧」。2万8000人の大歓声に包まれながら、初めて甲子園のダイヤモンドを1周。「憧れていた舞台でのホームランは本当に最高でした」と喜びをかみしめた。
「裏の4番」が結果で示した。おもに6番を打った宮城大会では、打率2割1分1厘にとどまった。「視野が狭くなっていた」。打ちたい気持ちが先行して、思うような結果を得られなかった。今大会は8番。「少しは悔しさもありますけど、県大会では自分が足を引っ張ってしまったので、受け止めたいと思います」。だが、打順を下げたのには理由がある。須江航監督(42)は「『裏の4番』的な方が本人は自由度高く打てる」と期待を込めた起用だった。
2試合で8打数3安打2打点。指揮官からは「力を抜いて、甘い球をしっかりアタックしていけば、結果は出る」と助言をもらった。力を抜いて、迷いなく振り切った。これが高田のスイングだ。
長打力は「過去イチ」(須江監督)。肩と足もある。遠投は115メートル。50メートル走は6・2秒と走攻守がそろう。昨秋までは主に一塁手だったが、昨冬から三塁手に本格転向した。ひと冬を越えて、見ていて安心する三塁手へと成長した。「本当にロマンがあります。あのサイズ感でサードがある程度守れて、走って、投げられて。将来性豊かな選手です」と指揮官のお墨付きだ。
「喜ぶのは今日まで」。高田の笑顔は真剣なまなざしに変わった。「ホームラン後は調子を崩してしまうバッターもいるので、この結果は忘れます」ときっぱり言い切った。力を抜いて打席に入る。あとは振り抜くだけだ。【木村有優】
◆高田庵冬(たかだ・あんと)2007年(平19)12月12日生まれ、滋賀県彦根市出身。小学校では多賀少年野球クラブで全国制覇を2度経験。中学では滋賀野洲ボーイズでプレーし、仙台育英では1年春に初のベンチ入り。50メートル走6・2秒。遠投115メートル。183センチ、88キロ。右投げ右打ち。好きな野球選手は巨人の岡本和真。