
<広島3-6阪神>◇10日◇マツダスタジアム
阪神森下翔太外野手(24)の打球は広島ファンの悲鳴とともに右中間にグンと伸びた。7回、2点差を追いつき、なおも2死一、二塁から森浦のチェンジアップをとらえた。2人が生還して5-3と勝ち越し。二塁に到達した森下はどうだとばかり、ベンチにアイブラックの決めポーズ。鮮やかな逆転劇を誇った。
「(中野)拓夢さんが同点打でいい場面を作ってくれたので、思い切っていこうという気持ちでした」
ほんの少し漂った不穏な空気も、一瞬で吹き飛ばした。伊原が6回に崩れ、満塁で救援した桐敷も止められず1-3と逆転された直後だった。「逆転されても取り返せる。投手に助けられてばかりではなく、自分たちも点を取りたい」と主軸のプライドを示した。
勝負強さは飛び抜けている。2本塁打した6日のDeNA戦に続くダントツ15度目の勝利打点。球宴前の数字としてはセ・リーグ歴代タイ記録となった。
6月中旬から少し下降したが、7月に入ってまた成績上昇。好不調の波の少なさが、3年目の成長。こだわるのは「姿勢」だ。打撃でつま先重心になる傾向があり、スクワットなどで重心の位置を矯正するのがルーティン。まっすぐ立てているかを毎日、確認する。
球場を訪れた侍ジャパン井端監督も納得の内容だろう。昨秋のプレミア12では全試合4番に据えたほど信頼を置く。「(今年は)最初出足がよくて、ちょっと下がったけど、また盛り返して。(代表に)呼んでダメということは今のところない」。WBC出場を熱望する森下にとってもいいアピールになった。
「各自がやるべきことをやっているだけ。それができれば強いと思う。個々の能力は高いので。誰かの調子が悪くても誰かがカバーできれば」。攻撃力で押し切るのもまた、阪神の勝利の方程式だ。【柏原誠】