
<真夏のライラック:大原・茂原樟陽・十枝翔太外野手(3年)>
<高校野球千葉大会:成田北12-2大原・茂原樟陽>◇10日◇1回戦◇長生の森公園野球場
苦難を乗り越えた3年間の思いが爆発した。大原・茂原樟陽の主将・十枝翔太外野手(3年)は0-1の3回無死二塁、中越えに同点となる適時三塁打を放つと、雄たけびを上げた。「本当にうれしかった。やったぞ」とチームメートが待つベンチに向かってガッツポーズを決めた。
茂原樟陽に入学し、1年の夏は助っ人として大会に参加した。当時、茂原樟陽の野球部員は全員3年生。大会が終わると部員はゼロになる。夏の大会で野球をやめるつもりだったが「自分が続けないと下の代も入ってこないというのは気づいていた」。見て見ぬふりはできなかった。部員1人と厳しい状況の中でも、野球を続ける決断をした。
苦しい日々が続いた。「数をこなすことしかできなくて。ノックやバッティングをしても話し相手がいなくて、どう続けていけばいいのか分からなかった」とモチベーションは低下。限界を感じ「1人では無理だな。後輩が入ってこなければやめよう」と覚悟もしたが、2年春に3人が入部。3年の春には4人が加わり、消滅危機を乗り越えた。
この日は1番遊撃で先発し3打数1安打1打点と躍動したが、チームは6回コールドで敗れ、野球部で過ごした3年間は終わった。「自分のチームが8人になって楽しかった」。後輩たちと一緒に過ごした最後の夏を、涙ながらに振り返った。【北村健龍】