
<東北地区注目選手紹介:連載3>
第107回全国高校野球選手権大会(8月5日開幕、甲子園)出場を懸け、来週から東北各地で熱戦が繰り広げられる。東北6県版では各県の注目校や選手を紹介する。3回目は青森山田と水沢工(岩手)。ともにエースの出来が鍵を握っている。
◇ ◇ ◇
岩手大会のダークホースだ。エース兼主将兼グラウンド課課長の阿部成希投手(3年)がチームをけん引する。千葉渉太監督の提案で、チームは18年から「株式会社水沢工業高校硬式野球部」と組織化され、グラウンド課や道具管理課など、各自の仕事に責任感を高めながら野球と向き合う。阿部も「いろんなことに目を配り、力を入れられるようになりました」という。
今のチームが成長するきっかけとなったのが昨秋の県大会。練習試合で勝ちを重ね自信を持って挑んだが、初戦で一関二に12-2で敗退した。ピンチに圧倒され、静まる「弱さ」を千葉監督から指摘された。「逆境の時こそ本性が出る。どんな時でも野球を楽しんでやっているなと思えるチームになりたい」。
アップから全力で取り組むように姿勢を正し、守備練習はよりきめ細やかに。打撃力を磨くため1日500から1000球を振り込んだ。今春県大会は盛岡誠桜に敗れ8強にとどまったが、「守備の面では自信になった。攻撃では1点をとりきる事が課題。5点以上取れるチームに」と打線のつながりを磨いている。
エースとしても成長を遂げる。阿部が投手を本格始動したのは1年秋。始めたころは最速120キロ。公式戦初マウンドは昨夏だった。「苦手だったものを自分の武器にしたい」と、握り方を試行錯誤しながらチェンジアップを磨き、ウエートトレーニングにも注力。筋肉量が9キロ増加し、球速も昨秋の137キロから142キロまで増した。
岩手大会は9日に開幕。水沢工は16日の初戦で、宮古商工と岩泉の勝者と対戦する。「みんな楽しみでしょうがないという雰囲気になっています。投手としてはゼロに抑えていきたい」。「株式会社水沢工業高校硬式野球部」が快進撃のスタートをきる。【高橋香奈】