
<日本生命セ・パ交流戦:阪神3-0ソフトバンク>◇21日◇甲子園
阪神大竹耕太郎投手(29)が古巣相手に育成出身では初となる12球団勝利を達成した。「日本生命セ・パ交流戦」で22年まで在籍したソフトバンクとの対戦。左手中指をつるアクシデントに見舞われながらも6回途中無失点の力投で3勝目を挙げた。23年には白星の権利を得ながらも逆転負けを喫しており、3年越しのリベンジとなった。チームは貯金を9とし、交流戦勝率5割をかけてラストゲームに臨む。
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3年越しの景色に、大竹は晴れやかな笑顔を浮かべた。古巣相手に挙げた12球団最後の白星。勝ち投手の権利を得ながら救援陣が逆転を許した、23年以来の対戦だった。お立ち台では感謝と喜びを入り交ぜながら、言葉を紡いだ。
「2年前に悔しい思いをしたので。今回は絶対勝つぞと言うつもりで投げましたし、お世話になった球団なので。感謝の気持ちを込めて、正々堂々と投げられたと思います」
5回までスイスイと無失点。6回だった。先頭川瀬に2ボールを与えたところで左手中指がつるアクシデント。6回途中1安打無失点で緊急降板となった。「普通の『パー』に戻らなくて。指は人生初でした」。それでもバトンを受けた中継ぎ陣が奮闘。3点リードを守り抜き、投手5人での完封リレーで特別な今季3勝目だ。試合後には「もう大丈夫です」と指については軽傷を強調した。
全12球団からの白星は史上21人目。育成出身者初の快挙だ。17年ソフトバンク育成4位から始まったプロ野球人生。剛速球を投げずとも、この日も60キロ台の変化球などを巧みに操って打者を翻弄(ほんろう)。少年時代から追いかけた和田や杉内らのような投球術を信じ、ここまで来た。
「160キロを投げられなくても、140キロ台でも1軍で投げられる。(和田さんや杉内さんの)ピッチングを見て励まされた。そういう風に自分もなっていければと思います」
8歳の頃、阪神対ホークスの03年日本シリーズを見たことが野球を好きになったキッカケ。熊本出身でホークスファンだった一方、セ・リーグ球団で唯一持っていたのが阪神の帽子だった。昔からなじみのある2球団。タテジマをまとう今もホークスへの感謝は尽きず、今回も相手ベンチには「バニラ系のお菓子」の差し入れを送ったという。
「レベルの高いチームでやったからこそ今の自分がある。感謝しています」
チームはこれで貯金を9とし、交流戦8勝9敗。勝率5割を目指して22日の最終戦に臨む。一足早く役目を果たした左腕は「リーグ戦も抑えて、優勝できるように自分の役割を全うしたいと思います」と宣言。古巣相手に、たしかな成長を見せた。【波部俊之介】
▼大竹が古巣ソフトバンクから初勝利を挙げ、現12球団から白星をマークした。セ、パ12球団となった58年以降、全球団勝利は23年西勇(阪神)以来21人目。05年の交流戦開始後では、近鉄を加えた13球団勝利を記録した3人を含めて18人目。大竹は通算36勝で、達成時の勝利数は14年林(DeNA)20勝、09年久保(阪神)34勝に次いで3番目の少なさ。
○…アクシデントで降板した大竹がスクランブル登板した桐敷に感謝だ。桐敷、佐藤輝と立ったお立ち台では「本当に申し訳なかったので、昨年に引き続き何か贈呈したいと思います。後で欲しいものを教えて」と提案。お肉大好きの桐敷は「おいしいお肉で」と答えると大竹は「(地元)熊本のおいしいお肉を送ります」と約束した。昨年4月27日には自身の後を受けて火消しした桐敷にアマゾンギフトカードを進呈していた。