
<日本生命セ・パ交流戦:ロッテ1-8阪神>18日◇甲子園
虎がようやくトンネルを抜けた。阪神が「日本生命セ・パ交流戦」のロッテ戦で連敗を7でストップさせた。先発伊藤将司投手(29)が6回9安打1失点と粘りの投球で、昨年7月6日DeNA戦以来、347日ぶりとなる白星。左腕の力投に応えるように打線も14安打8得点とお目覚めだ。連敗地獄とはもう、オサラバ。甲子園を包んでいたモヤモヤも吹き飛ぶような痛快な大脱出劇だ。
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まだ日焼けが残る背番号27の顔に笑みが浮かんだ。長かった2軍生活。もがいた日々が報われた。伊藤将が満員の甲子園に帰ってきた。347日ぶりの勝利の味…。「長いと思います。長いです」。いや、何よりもチームの連敗を止めたことがうれしい。久しぶりのお立ち台で「興奮しています」と照れ笑いした。
「作戦もたくさん仕掛けられましたが、落ち着いて投げることができたと思います。最後もピンチになりましたが、粘り強く最少失点で、なんとかゲームを作ることができました」
初回から3回連続で先頭に安打され、足を使った攻撃を仕掛けられたが、坂本とのバッテリーで対応した。5回は1死一塁から長打を許したが近本、小幡、坂本の中継プレーで本塁アウト。バックにも支えられた。6回は1死満塁から1点にとどめ、6回1失点で交代。全球種を内外角ぎりぎりに投げ分ける、持ち味のスタイルが光った。
昨年の開幕前から生命線の直球が走らず、出口の見えない不振に陥った。フォームから何から試行錯誤したが好転しない。今春キャンプではリラックスタイムである入浴中にもフォーム映像を見返した。それほど研究熱心な男を復活させたのは、開き直りだった。
今年5月。「もう、いったんリセットして『感覚』でやってみようかなと。考えすぎても、もう意味ねえなと思って」。必死に見てきた映像やデータに背を向けた。すると「いい感じでどんどん直球が良くなっていった」。球速も切れ味も良化。そうしてつかんだ今季初先発の11日西武戦(ベルーナドーム)で8回途中無失点の快投。1週間後の勝利へとつながった。
藤川監督は、自分と向き合い苦闘してきた姿に感服した。「ファームでも、ずっとゲームから逃げることなく戦い続けた。それで突き破ったと思う。今後も期待できますね」。入団した21年から3年で計29勝を挙げた元左腕エース。セ・リーグ首位が投打に強さを見せつけて連敗脱出。待ちに待った頼もしい戦力を得て、もう1度エンジンを点火する。【柏原誠】
▽阪神坂本(3つの盗塁刺など先発伊藤将をサポート)「機動力を使うというのはミーティングでも話が出ていたので、しっかり準備をして。将司(伊藤)もけん制をいっぱい入れてくれたり、変えたりとか、いろいろしてくれていたので。そういうことができたと思う」