
東京ヴェルディ城福浩監督(64)が13日、鹿島へ電撃移籍したDF千田海人(30)について言及した。次節柏レイソル戦に向けて稲城市でメディア対応し、さまざまな思いを口にした。
千田へのオファーは電撃的なものだった。9日に突如として発表された。13位クラブから首位クラブへの“飛び級”だった。
「(ルヴァン杯の)ファーストレグ(第1戦=6月4日)の時はなかった。彼も相当悩んだと思いますが、諸条件ですね。年俸であるとか、契約年数であるとか、トータルで今の鹿島さんの立ち位置であるとか考えたら、彼がこの申し出を断るのは難しいだろうなって我々は思いました」
そしてこう続けた。
「ただ彼はここヴェルディでやってきた確かなものも感じていましたし、自分の夢を追い求めるだけでいいのかという葛藤はあったと思います。ある日までに判断を委ねたんですけど、彼は1日でも長く考えれば、それだけチームに迷惑がかかると判断したんだと思います。それより早いタイミングで言ってきてくれました。相当悩んだと思いますし、彼の判断を尊重したいと思うし、彼ともそういう話をしました。秋田からヴェルディに来て、苦しい時間も多くあったと思いますけど、そこを耐え抜いて、階段をいくつか上がってJ1で戦えるレベルにまで来た。本当に彼の努力だと思う」
まさしく苦労人。プロになれるかも分からなかった。神奈川大を卒業後、当時J3だったブラウブリッツ秋田でキャリアをスタートさせた。地道に出場時間を伸ばし、23年に当時J2の東京Vへ移籍。当初はレギュラーという立場でなかったが、ここでも練習を積み重ね、プロ8年目にして夢のJ1ピッチにたどり付いた。
自らが試合に出られない時でも、仲間を鼓舞し続けた。その貢献度は計り知れないものがあった。そして31歳となる今年、Jリーグを代表する名門・鹿島の一員となった。その道のりは尊く、まさしく努力の結晶というべきものだった。
「オンザピッチ、オフザピッチ含めてクラブにとって大きな損失ですけれど、僕個人にとっては、サッカー選手としては本当に夢のある話で、彼の夢に向かって邁進(まいしん)してほしいなという気持ちもあります」
東京Vは千田というDFリーダーが去った中、若い選手たちの奮起が求められる。
「これからその代わりを誰がするんだと。ピッチに立てない時にでも力になれるような選手がどれだけ出てくるのかというところは、このクラブが次に問われているところかなと思います」
夏のウインドーで新たな補強が求められるところだが、攻守におけるハードワークをどこよりも求めるクラブゆえ、補強すればすぐ結果が出るものではない。
城福監督は「我々はどこかで試合に出ている選手を取って、チームのやり方だけ理解して数日で送り出していくってことはほぼ不可能なチームなんです」とキッパリ言う。
それゆえに「何が必要かっていうと、時間なんです。本来であればこのタイミング(6月の特別期間)で成就すれば、我々にとってもアジャストする時間ができる。他のチームで出ていない選手をJ1で戦うようにするには時間が必要。のんびりしていられない」。
7月のウインドーが開くタイミングで、クラブはどう動くのか。主力の流出によって今後の補強策が喫緊の課題となっている。