
西武は7日、育成契約3年目のモンテル外野手(25)と支配下選手契約を締結したと発表した。
2月9日、南郷キャンプ。全体練習後にあてもなくサブグラウンドをのぞいた。モンテルがいた。
熊代聖人1軍外野守備走塁コーチ(36)が楽しそうにノックバットを振っている。いわゆる「特守」だ。
キャンプでは割と当たり前の光景だ。少しだけ見たら移動しようと思っていた。すると、早くも汗まみれ砂まみれになっているモンテルが、20メートル先から叫んできた。
「金子さん!! これは戦(いくさ)です。僕と熊代さんの戦です。どちらが先に倒れるか。見届けてください!!」
左翼の守備位置で約60本、前後左右に飛球を振られ続けた。「うわー!!」「しゃー!!」。声にならない声を上げ続ける。すっかり場にのみこまれた。最後まで離れられなかった。
結局、モンテルが倒れた。「最後まで見届けていただいてありがとうございました」。全てを終えて、最高に充実した顔だった。
実はその数日前、育成選手のモンテルは熊代コーチに指摘されていた。
「もっと目立たないとダメ。自分を見てくださいってアピールするためには、自分から何かやらないと、そういうふうに映らないから」
それを受け手当然、他の誰よりも声を出す。気合を見せる。その上でモンテルは、記者である私を巻き込んできた。
こうした方がいい-。そうアドバイスされてすぐ動ける人、そうでない人がいる。私はモンテルの気概に乗っかって記事にした。
プロ野球はファンに愛されてなんぼの世界だ。レギュラー獲得へはここからがさらに険しい。とはいえ“記憶に残る”選手になれる資質を、モンテルはすでに備えている。【金子真仁】