
<阪神8-1広島>◇20日◇甲子園
阪神ドラフト1位伊原の母優子さん(56)が日刊スポーツに手記を寄せた。24年以上そばで見守り続けた母が愛息の高校入学時以来、約9年ぶりに息子への思いや感謝を言葉に変えた。
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陵人、初勝利おめでとう。自分でもビックリするぐらい緊張しながら見ていました。ピンチもあったけど、粘って頑張ってくれたのでホッとしました。
陵人は覚えていないかもしれないけど、高校で寮に入るときに小さなメモのような手紙に書いた言葉を、もう一度送ります。「謙虚に、ひたむきに、感謝と思いやりの心を忘れないで」。いま、プロの舞台まで来ても、その言葉は大事だし、その心は忘れてほしくないなと思います。
野球をしている姿をたくさん見てきました。プロの世界でも、自分を出した投球をできていることは、親から見ても素晴らしいなと思います。対戦相手の方はスター選手ばかりだし、私は毎回、祈るような気持ちで手を合わせながら見ています。いつになったらドキドキせずに見られる時が来るんだろう…。
陵人は物心がついたときから左手でなんでもしていました。ご飯を食べるとか、いろいろなことを始めたけど、同じ左利きだった私が教えたわけでも見せたわけでもないんです。ただ、止めることも一切しませんでした。器用にこなしていたので、本人が苦に思わなければ、このまま使いこなしてくれればと思っていました。
どんなタイミングも1つ1つ人間的にもレベルが上がっていることは、すごかったです。大学4年生の時にはドラフト会議での指名漏れもありましたね。それを乗り越えたことも印象としては大きかったです。涙する姿を見ることは今までなかったので、そういう姿を見せるほど、いろいろ思うことがあったのかなと思いました。『大丈夫かな?』と心配しましたが、引きずらずに奮い立ったのも早かったです。
周りの人にも支えていただいて、前を向いて、1歩1歩進んで、社会人野球という新たな世界での姿を見せてもらえたこともうれしかったです。
甲子園で、あんなに大きな声で応援されていて感動しました。今まで普通に見て聞いてきましたが、選手の力になる、背中を押す、すごい応援なんだなと感激しました。
いろんなことがあって、好きだからこそ嫌になることはあったと思うけど、野球をずっと好きでいてくれて、ずっと頑張ってくれて、本当にありがとう。これからも体に気をつけて頑張って欲しいです。