
<イースタン・リーグ:日本ハム2-8オイシックス>◇20日◇鎌ケ谷
日本ハムのドラフト1位柴田獅子投手(19)が20日、イースタン・リーグのオイシックス戦(鎌ケ谷)で鮮烈な投手デビューを飾った。自己最速の151キロを記録した直球にスライダーを交えて3者連続三振。1回無失点で投じたわずか12球で、視察に訪れた栗山英樹CBO(63)、大阪遠征中の1軍新庄剛志監督(53)の胸を躍らせた。
◇ ◇ ◇
柴田がイメージ通りに三振を奪い続けた。マウンドで考えることは「こう投げたら抑えられる」。打者を観察し、直球とスライダーだけで3者連続三振。バットに当たったのは先頭・坂口の初球ファウル1球のみ。4球目は低めに自己最速151キロの直球で見逃し三振。左打者の坂口はまったく手が出なかった。「(緊張は)全くないです。良い球を投げられた」と、涼しい顔で話した。
柴田は打者の心につけ込む。「ピッチングマシンだと打てるじゃないですか。でも、人が投げるってことは心理がある」。ただ単純に投げることに集中するのではなく、打者との駆け引きで投球を組み立てる。「(投手が)遊び心を持てば、興味から(打者を打ち取る)引き出しが増える。(打者目線で見ると)遊び心を持ったピッチャーが来ると、どう打ち崩そうかとなる」。マウンドと打席、両方に立つからこその視点を持つ。
洞察力と好奇心、天性の感覚から、変幻自在のスライダーが生まれる。打者の反応を見ながら、1球ごとに投げ方や体重移動を変化させ、曲がり幅などを変える。この日の12球のうち5球投じたスライダーも、性質が同じものは1球もない。「変化球って無限。一緒の球をなくすことが、バッターには効果的」。パドレス・ダルビッシュの投球スタイルに憧れる右腕は目を輝かせた。
首脳陣の心も動いた。バックネット裏から見つめた栗山CBOが「思った通り。でも、もっと高いレベルを望んでるから。『こんなもんじゃないでしょ? 柴田くん』ってとこ」と不敵な笑みを見せると、遠征中の新庄監督は「待ち受け画面にしとこうかな(笑い)。見ます、チェックします!」と声が弾んだ。そんな柴田は、目標をあえて口にしない。「狙っていたら取れない。ひそかに(自分の中で)」。夢がどこまでも広がる。【黒須亮】