
<レンジャーズ0-3ドジャース>◇18日(日本時間19日)◇グローブライフフィールド
【アーリントン(米テキサス州)18日(日本時間19日)=四竈衛】産休の大谷さん、ご心配なく-。ドジャース山本由伸投手(26)が敵地レンジャーズ戦に先発。7回5安打無失点無四球、自己最多タイとなる10奪三振の快投で今季3勝目(1敗)を挙げた。レ軍の先発、サイ・ヤング賞2回の怪腕ジェーコブ・デグロム投手(36)との息詰まる投手戦に快勝。18回連続無失点で防御率0・93とし、ナ・リーグトップに躍り出た。
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ベンチからの確かな信頼を背番号「18」に感じつつ、山本は7回のマウンドへ歩を進めた。1点リードの6回終了時で87球。1年前であれば、間違いなく交代だった。だが、ロバーツ監督は、交代前恒例の「ハグ」をせず、山本を再び送り出した。「ヨシ(山本)がベストの選択だった」。そんな思いを、山本が意気に感じないはずはなかった。7回1死一塁からの102球目はスライダーで三振に仕留め、二盗を狙った走者が憤死して併殺。沸き立つダッグアウトで祝福のハイタッチを交わした。「すごくやりがいを感じていますし、もっともっといい投球を目指してやっていけたらと思います」。
超大物との対決が、山本の闘争本能を刺激した。相手はサイ・ヤング賞2回のデグロム。故障明けながら最速159キロを計測した快速右腕相手に初回、1点の援護を受けた。「すばらしい投手と投げ合えるのはうれしく思います。より気を引き締めて、1つのミスもしないように心がけて投げました」。デグロムといえば、快速球だけでなく、通算奪三振率10・9(1試合平均)に対し、四球率は2・0。三振が取れて四球が少ない、完成された投手として知られる。そんな剛腕相手に、山本は無四球10奪三振。非の打ちどころのない投球で投げ勝った。
科学的根拠に基づいた最新機器による体力強化、データ分析の細分化が進む一方のメジャーでも、山本は感覚重視の自己流を変えていない。オリックス時代同様、今もウエートトレには目を向けてない。屋外で行う独自の「やり投げ」を除けば、ストレッチ、壁当て、逆立ちなど、日々のルーティンの動きは、シューズを履かず、できるだけ素足で繰り返す。周囲のトレーナーやコーチに指示されたのではなく、すべて自らの判断。プロ野球選手としては小柄な体を最大限に生かすため、故障をしない体を作るために、山本は「オーガニック野菜」のように、体を研ぎ澄ませてきた。
開幕後、間もないとはいえ、防御率トップをはじめ、早くも各部門の成績上位に名前を連ね始めた。オリックス時代に3年連続沢村賞の底力を実証し始めた12年契約の2年目。「自分の力というか、スタイルをしっかり発揮できているかなと思います」。謙虚な口調の中にも、新エースとしての確かな自覚が見え隠れしていた。
○…「長男」の大谷が産休で不在のこの日は、「次男」の山本が先頭に立って白星への原動力となった。ビジターのロッカー室は、本拠地と同じように「三男」の佐々木を含めた日本人3人が横並び。大谷のロッカーには、通常通りユニホームやグラブなどが用意されていたが、最終的に大谷本人は不在だった。「いつも大谷さんが引っ張ってくれているので、こういう時はみんなで少しずつ大谷さんの代わり、穴埋めというか、カバーして戦えたので、すごくいい試合だったと思います」。4連勝の立役者となった「次男」は「大谷さん、ごゆっくり」と言わずとも? この時ばかりは少しだけ胸を張った。
▼ドジャース山本が7回無失点で、両リーグ最多タイの3勝目。防御率も0・91でナ・リーグ1位に立った。過去の日本人では20年ダルビッシュが最多勝を獲得しているが、最優秀防御率はいない。10奪三振は3月28日タイガース戦に並ぶ自己最多。今季通算を38とし、ナ・リーグ2位に浮上した。オプタスタッツによると、シーズン最初の5先発で35奪三振以上、K/BB(三振と四球の比率)が5以上(5・43)で被安打20未満(18)失点5未満(4)の投手は、近代野球で初めて。