
70年の大阪万博は、メジャーリーガーたちが見学していたのをご存じですか?
いよいよ、大阪・関西万博が開幕しました。1970年の大阪万博に続き、55年ぶりの大阪開催とあって、居ても立っても居られず、開幕早々に仕事の合間を縫って行って来ました。なぜなら、万博には特別な思い入れがあるからです。
70年大阪万博のときはアメリカ館の「月の石」が最大の呼び物でした。しかし、私は同館の大リーグコーナーに飾られていた、往年の名選手たちのユニホームやバットなどの展示品に目がくぎ付け。当時、中学2年生だった私の夢が大きく変わる瞬間にもなりました。
その年は3月にサンフランシスコ・ジャイアンツが来日。例年秋に日米親善野球で本場アメリカのチームが日本を訪れていましたが、その時は前例のない春に日本プロ野球チームとオープン戦を行うために来日。同21日に東京スタジアムで行われた巨人との初戦を観に行きました。
大リーグの春季キャンプ中とあって、総勢約40人もの選手が来日。後の殿堂入りウイリー・メイズ、ウイリー・マッコビー、フアン・マリシャルはじめ、後に本塁打王となる若きジョージ・フォスター、日本球界入りするボビー・テーラー(中日)、バーニー・ウイリアムス(阪急)ら、実に多彩なメンバーがそろっていました。
また、東京だけでなく山口県下関市や大阪、名古屋など日本各地を転戦しました。何と日本滞在中9日間でダブルヘッダーを含む9試合という過密スケジュール。大阪遠征では、ちょうど同15日に開幕したばかりの大阪万博を見学。大勢の選手たちが、会場内で楽しんでいる様子が報道されていました。
前代未聞のキャンプ中に来日という強行日程が災いしたか、ナ・リーグ西地区の優勝候補にも挙げられたジャイアンツが開幕から出遅れました。5月23日の時点で4位と低迷し、早くもクライド・キング監督が解任。最終的に首位レッズから16ゲーム差の3位に終わりました。
それでもメジャーは時代が変わり、2000年に初の日本開幕戦カブス-メッツを開催。その年カブスは最下位でしたが、メッツはワイルドカードから見事リーグ優勝。ワールドシリーズでヤンキースとの同都市対決「サブウエーシリーズ」には敗れたものの、春先に来日すると勝てないというジンクスを破りました。
その後も、04年に日本開幕戦で来日したヤンキースが地区優勝。08年はレッドソックスが2位ながらワイルドカードでプレーオフ出場。12年はアスレチックスが地区優勝し、19年もワイルドカードでプレーオフ出場と、春先に多くのチームが来日しても結果を残すようになりました。
そして今年、大阪・関西万博の年にドジャースが日本開幕戦。早期の調整や長時間の移動など負担を強いられながらもカブスに2連勝。さらに米国本土で開幕してからも快進撃を続け、球団史上70年ぶり3度目の開幕8連勝と最高のスタートを切りました。
これで早くも本命ドジャースが独走かと思いきや、何と打倒ドジャースに燃えるパドレスが球団新記録のホーム開幕11連勝しました。宿敵ジャイアンツも03年以来最高のスタートとなる開幕10勝3敗をマーク。開幕早々、予想外の超ハイレベルなペナントレースを繰り広げています。
それでも、70年大阪万博のジャイアンツとは対照的に、今年大阪・関西万博でドジャースが過密日程のお構いなく2年連続世界一なるか、投打二刀流の復活を目指す大谷翔平投手が3年連続4度目のMVPなるか。162試合のペナントレースを注目していきたいと思います。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)