
<中日3-5巨人>◇3日◇バンテリンドーム
マー君が絶叫した。巨人田中将大投手(36)が中日打線を5回5安打3四球1失点で粘りきり、復活星を手にした。
小学生時代にバッテリーを組んだ坂本勇人内野手(36)の先制中犠飛などで援護を受けると、3点リードの5回1死満塁を三ゴロ併殺で切り抜けるなど要所を締めた。気迫を込めた96球で23年8月26日ソフトバンク戦(楽天モバイル)以来586日ぶりの勝利。日米通算198勝目を挙げ、名球会資格の200勝まで“マジック2”とした。チームは開幕から2カード連続の勝ち越しで首位を堅守した。
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鬼気迫る表情だった。田中はにらみつけるように捕手甲斐のサインを確認した。勝利投手の権利がかかった5回。絶体絶命の大ピンチでレジェンド右腕の迫力が増した。
「あそこは出し切るしかなかった」
球速がこの日最速の149キロまで上がる。1死満塁。中日細川を136キロスライダーで三ゴロ併殺に仕留めた。渾身(こんしん)のガッツポーズと雄たけび。あのマー君が、熱い姿のまま帰ってきた。
5回を5安打3四球で1失点。粘って粘って要所をしのぎ、実に586日ぶりの白星に感慨深げだ。
「一言ではなかなか言い表すことはできないですけど。とにかく大きな1勝ですね。自分にとってもすごく特別だし、いろんな思いがあって勝つことができて本当にうれしく思います」
マウンドを降りれば、いつだって冷静だ。この日もチームバスで試合開始の約4時間前に球場入り。「いろいろイレギュラーなことはあるので。こだわりは持たないようにしている」。並外れた適応力が必要だった7年間のメジャー経験もへて、登板前のルーティンは持たない。ただ、マウンド上では今も昔もブレることなく気迫がほとばしる。
北の大地から甲子園を目指した高校時代から大切にしてきた言葉がある。「氣持ち」。世間に名をとどろかせた駒大苫小牧時代からグラブに刺しゅうを施す。「そんな無理につなげなくてもいいんじゃないですか」といまさら多くは語らないが、移籍後初登板でも“氣持ち”は健在だった。
プロ入り後は楽天で栄華を極めた。名門ヤンキースではエースとして6年連続2ケタ勝利も記録した。そして、復帰した楽天ではどん底も味わった。23年10月に右肘を手術。昨季はわずか1試合登板で未勝利に終わった。苦悩を乗り越えてつかんだ移籍後初登板。最後は“氣持ち”が右腕に力を宿してくれた。
13年、楽天との日本シリーズ第7戦の最終回に巨人の前に立ちはだかった剛腕が、13年ぶりの日本一を目指すチームの輪に加わった。新天地で日米通算198勝目を手にして、ますます闘志に火をともした。
「次の登板は本当にこんなんじゃダメだと思う。これを繰り返さないようにやらないとなと思います」
200勝まで残り2勝。衰え知らずの熱い“氣持ち”で大記録に挑戦する。【水谷京裕】
○…ピンチの場面で田中に寄り添ってくれたのは“幼なじみ”だった。5回1死一塁から岡林に右翼線への二塁打を浴びると、小学生時代に兵庫・伊丹の少年野球チーム「昆陽里タイガース」でバッテリーを組んでいた坂本が真っ先にマウンドに駆け寄ってきた。「2人してこのゲーム、少し存在感を出せたかなと思います」とうれしそうだった。