
<ヤクルト3-0広島>◇3日◇神宮
ヤクルト小川泰弘投手が34歳の進化を示した。自身3年ぶり2度目のマダックス(100球未満の完封勝利)を決めた。9回を2安打無四球の92球でかたづけ、広島打線に三塁すら踏ませなかった。22年5月3日阪神戦以来1066日ぶり完封どころか、21年5月15日中日戦以来1419日ぶりのマダックスを達成。昨季2勝だった右腕はオフに習得した新球を駆使し、チームを2連勝に導いた。
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最後まで涼しい顔で投げ切った。9回2死、広島の代打田村をフォークで遊ゴロに仕留めた。崩れる気配なく、3者凡退で試合を締めた。球数92。8球の余裕を残し、マダックスにたどり着いた。「ファンのみなさんは強いライアンを求めていると思う。自分もそこに持っていきたい。去年の悔しい思いもある。もちろん1年、1年が勝負だが、まだまだ若い子には負けたくない気持ちが強い」。お立ち台から最高の景色をかみしめた。
オフは「挑戦」を自身に課した。昨季は自己ワーストの2勝どまり。今年5月で35歳の勝負どころに立つ。新しい変化球を追求した。まずジャイロスライダー。主に対右打者用に普通のスライダーよりも速く、縦に落ちる新球を磨いた。加えてシンカーも習得。キャンプでは高津監督にコツを聞きに出向いた。聞いた感覚を自分流にアレンジし、少しずつ仕上げた。
マウンドでは自信を持って2つの新球を投げ込んだ。7回1死、堂林に初球のジャイロスライダーで芯を外した。三ゴロに「きついところで1球で終わるのはすごくいい面」。6回先頭、林にはカウント1-1からシンカーで空振りを奪い、追い込んだ。続くフォークで空振り三振に仕留めた。「結果が出ているので、使えるかな。中村(悠)が打者をよく観察してサインを出してくれた」。手応えをつかみ、バッテリーを組んだ中村悠に感謝した。
オープン戦では3試合で8回2/3を5失点とアピールできず、6枚目でギリギリ滑り込んだ開幕ローテの座だった。フライアウト15個と直球も力強く、最高の結果を導いた。高津監督は「どこか探してやろうと思ったけど、文句をつけられない。チームを元気づけていくとか、引っ張っていくのはやっぱりベテランの役割。そういうゲームになった」と最敬礼した。円熟味の中に強さを宿す。ライアンが進化の13年目とする。【上田悠太】
◆マダックス 100球未満での完封を意味する造語。大リーグのブレーブスなどで通算355勝を挙げ殿堂入りしたグレグ・マダックスは、通算35完封のうち13度を100球未満で達成。抜群の制球力で「精密機械」と呼ばれた。
▼小川が92球で完封勝利。小川の完封は22年5月3日阪神戦以来3年ぶり11度目で、100球未満での完封勝ちは21年5月15日中日戦(99球)以来自身2度目。100球未満の完封を複数回記録したのは昨季2度達成の伊藤(日本ハム)がいるが、ヤクルトでは79年6月16日阪神戦(94球)と80年5月24日中日戦(88球)でマークした鈴木康以来45年ぶり。