
<センバツ高校野球:横浜11-4智弁和歌山>◇30日◇決勝
智弁和歌山は、31年ぶりの紫紺の大旗に手が届かなかった。94年に優勝して以来、センバツの決勝は4連敗となった。
渡辺颯人投手(3年)がついに力尽きた。初戦から5試合連続で先発。好投続きでチームを決勝に導いたエースは、1-1の3回に勝ち越しを許すと、6回に6失点でイニング途中KO。強力打線に屈した。
それでも、復活を印象づける大会だった。甲子園通算68勝の高嶋仁監督(78)のあとを継いだ中谷仁監督(45)のもと、21年夏の甲子園を制覇。新しい智弁和歌山を作り上げた。
だが、その後の甲子園では「出ると負け」。3大会連続で初戦敗退の憂き目にあった。「智弁和歌山は弱くなった」。厳しい声が聞こえてきた。今の選手は智弁和歌山の名前に甘えていると、中谷監督が案じる時期もあった。「本当の現在地を知る必要がある」と内外に発信してきたが、思うように結果は出なかった。
甲子園では勝てていなかったが、極端な「低迷」だったわけではない。21年夏の優勝以来、世間の求めるものが高くなっていた。名門ならでは苦悩の中、逆襲を誓う中谷監督の指導法にも試行錯誤が加わった。選手の獲得ルートも広がった。悔しさをバネにしながら、じわじわと力を蓄え、久しぶりに甲子園で存在感を見せた。