
<広島0-4阪神>◇28日◇マツダスタジアム
あかん! 強すぎる! 阪神佐藤輝明内野手(26)が開幕・広島戦(マツダスタジアム)の初回、いきなり25年12球団最速アーチとなる先制&決勝2ランを右翼席に運び、就任1年目の藤川球児監督(44)に初陣ウイニングボールをプレゼントした。前日27日に指揮官からイチ押し選手に指名され、さっそくプロ5年目で初の開幕弾を決めた。初の開幕投手を任された村上頌樹(26)も虎35年ぶり開幕戦完封まであと1人の快投。藤川阪神が盤石の完勝スタートを切った。
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入り交じる歓声とため息を全身に浴びながら、佐藤輝はゆっくりと一塁へ走り出した。試合前セレモニーなど、敵地ムードが充満したマツダスタジアム。赤く染まる右翼席への1発は、試合開始早々に球場の雰囲気を変えた。
「開幕戦で打ちたいなと思っていたところがあったので。良かったです」
初回1死一塁。広島先発森下に対して、カウント1-1からの3球目だ。甘く入った129キロチェンジアップを逃さずフルスイング。角度良く右翼席へ先制2ランだ。12球団で今季最速となったアーチ。プロ5年目で自身初の開幕戦本塁打を鮮やかに決め、藤川阪神の初得点ももたらした。
約1年前、昨季の開幕直後は苦しんでいた。4月の月間打率は2割2厘。夏場にかけて調子を上げた一方で、調整の難しさを実感していた。「そこが難しいところ。絶対に波はあるけど、その波を少なくすることが課題」。
一年を通じて状態を維持するため、最も大切だと語るのは自分の打撃への「理解」。不調などに陥った際、自分で修正できる力を追い求めている。シーズン中も毎打席欠かさず打撃映像をチェックするのは日課。分析と修正を日々繰り返し、状態を整えている。
「感覚だけじゃ、どうしても無理。客観的に調子が悪い時はこうなっているというのが分かるように」
この日だけにとどまらず、目指すのはシーズンを通した活躍。だからこそ、良い1年になりそうかと問われても「それを目指してやっているので。初戦としては良かった」とキッパリ。気を引き締めて次戦を見据えた。
藤川監督は前日27日にキーマンとして名前を挙げていた男の“一発回答”に「カープファンの熱い声援に押されてしまうと思いましたので。そういう意味では佐藤が素晴らしい1本を打ってくれましたね」と〓(順の川が峡の旧字体のツクリ)を緩めた。本人も今季から座る3番の打順に「スムーズにいける感じはする」と納得顔だ。
今季のさらなる飛躍を予感させた1発。豪快な幕開け弾で、V奪還への号砲を鳴らした。【波部俊之介】