
<番記者プロデュース>
歴史的大敗からの西武復権は高橋光成投手(28)の右腕にかかる。昨季は0勝11敗。ロン毛エースは魂を揺さぶる絵を求めた。「武人画師」として知られる水墨画家のこうじょう雅之氏(46)に作品を依頼し、投げる姿を表現した水墨画の完成記念に東京・日刊スポーツ新聞社で対談を行った。「番記者プロデュース」の西武編第2弾を、前後編でお届けした取材後記です。【取材・構成=金子真仁】
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対談は3月半ば、東京・築地の日刊スポーツ本社で行われた。待ち合わせ時間前、前方から歩いてくる高橋の姿に「おっ」と声が出た。ロン毛を結い、紺一色のコーディネート。(行ったことないけれど)ここはイタリアかと思った。
粋な下町、強烈なオーラはどうにも目立つ。でも高橋は朗らかだ。「よろしくお願いしま~す」。いきなり興味津々だ。「え~っ、新聞の自販機ってあるんですね。これはYouTubeの配信中とか? ボートレースの予想ですか? 群馬にも桐生ありますよ」。通りがかりのファンに握手を求められ、快く応じた。
社屋に入る。スポーツ名場面の写真が通路を彩る。「僕もいつかここに載りたいな~」。怖そうに思われることも時にあるけれど、高橋は野山を駆けた少年時代から純粋だ。23日のDeNA戦で死球。取材では「桑原選手には申し訳なかったです…」と声を落とし、帰り際にも家族含め、桑原への心配を続けていた。マウンドでは優しき心を無理して押し込め、雷神として白球を握る。【金子真仁】