
<番記者プロデュース>
歴史的大敗からの西武復権は高橋光成投手(28)の右腕にかかる。昨季は0勝11敗。ロン毛エースは魂を揺さぶる絵を求めた。「武人画師」として知られる水墨画家のこうじょう雅之氏(46)に作品を依頼し、投げる姿を表現した水墨画の完成記念に東京・日刊スポーツ新聞社で対談を行った。「番記者プロデュース」の西武編第2弾。前後編でお届けします。【取材・構成=金子真仁】
◇ ◇
高橋光成(以下「光成」)の雷神画を描いたこうじょう氏は、これまでも多くの武人画を手がけてきた。
「武人」とはいかなるものか。
こうじょう氏 常に覚悟を持った人を武人、と僕は捉えています。何かを背負って挑むという人。
では覚悟とは。
こうじょう氏 現時点での自分なりの答えでは、誰かのために何かをやる…それが覚悟の象徴かな。自分のためってエゴになると思うんですよね。「誰か」を思い描いて、自分以外にエネルギーを向けること、それが覚悟じゃないかな。
光成 そうですよね。プロ野球ってすごい高いレベルの戦いですし、最後は覚悟というか、思いの差が出ると思うんですよ。「俺の球、打ってみろ!!」って投げるボールと普通に投げるボールって、球の重さが変わってくると僕は思ってて。それくらい、思いって宿ると思うんですよね。
一生懸命投げていても、去年はなかなかうまくいかない。悪循環だった。
光成 打ってみろ!! って思い切りど真ん中投げればいいのに、逃げてコースに投げなきゃってボールになって、カウント苦しくなって、最後はまっすぐを打たれる典型的なパターンで…。どこかで弱気になってました。さっき、こうじょう先生が「ハンマーをぶん回すような力強さ」とおっしゃってくれて、すごくうれしくて。僕の持ち味をどこか忘れていたのかなと。絵を見て、思い出させてもらえる感じがしました。
こうじょう氏 だからね、イメージはストライクゾーンがこうあるじゃないですか。ストライクゾーンいっぱいのでっかいボールを投げてほしい。
光成 あーっ…(と感嘆の表情)。
こうじょう氏 コースじゃなくて、ドカーンというイメージで。そういう感覚の、どこ投げられても結局打てへんよね、って投手になりそうな気がする。
光成 大きいボール、って発想はなかったです。確かにそれすればいいんですよね。
自身のブランド「DK3」も人気を高める。Dは「支配する」のDOMINATEのD。制圧する。誰にも負けない、自分にも負けない。後押ししてくれる雷神画がある。
光成 僕は、去年みたいな、そんなレベルで終わらないと思って自分を鼓舞してやっています。最高の1年にしたいです。
こうじょう氏 魅了してほしいね。髪はこれくらい(腰の高さ)伸ばしてほしいね。
光成 ここまで!?
雷神光成、勝負のシーズンが間もなく始まる。
◆こうじょう雅之 1978年(昭53)7月24日生まれ、京都府宇治市出身。近江(滋賀)では野球部に所属し、捕手として96年夏の甲子園にも出場。14年から武人画師の活動を開始。17年には京都・平等院鳳凰堂での「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」イベントで武人画びょうぶを公開し、大きな話題に。宇治市観光大使。