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「W杯優勝」の現実味は?前会長の田嶋幸三氏に聞く5つのピース「世界的スター」候補は/連載3


日本サッカー協会(JFA)前会長田嶋幸三氏が、日本代表チームのW杯優勝の現実味について語りました。森保一監督率いる「史上最強」チームは、2026年W杯北中米大会で優勝を目指すと公言しています。田嶋氏は、勝利には以下の5つの要素が必要と述べています: ①個のレベルとチームの連動性、②センターバックとGKのサイズ、③自国監督の起用、④準備、⑤世界的スター選手の出現。特にチームの連携力と選手の身体的高さ、そしてヨーロッパ大陸で経験を積んでいる選手たちが重要であると強調。森保監督の続投とJFAの一貫した方針が、過去のW杯からの教訓を活かし、環境を整えつつ優勝への道を築いています。さらに、世界的スターの出現が「優勝」のカギになると考えられ、日本代表選手たちがビッグクラブでの新たな挑戦に期待が高まっています。

日本代表について語る日本サッカー協会(JFA)前会長の田嶋幸三氏

日本代表が史上最速で2026年FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会の切符を手にした。「史上最強」の呼び声も高い森保ジャパンが狙うのは「世界一」。21年東京オリンピック(五輪)から22年W杯カタール大会、史上初の続投となる今回まで森保一監督(56)を支えてきた、日本サッカー協会(JFA)前会長の田嶋幸三氏(67=現名誉会長)に「W杯優勝」の現実味と期待、必要なピースを尋ねた。【取材・構成=岩田千代巳、木下淳】

8大会連続8度目のW杯へ向かう森保監督は、明確に、言葉を発している。

「ベスト8という目標ではなく、優勝、世界一を目指しながらレベルアップをしていく」

第2次体制の初陣を迎えた23年3月シリーズで、選手たちとも「W杯優勝」という目標を共有。指揮官も自ら、公の場で言葉として出すようになった。

JFAには2005年宣言で設定した「2050年までにサッカーファミリーを1000万人にし、FIFAワールドカップで優勝する」という夢がある。もし26年大会で目標通りになれば、実に6大会も前倒しの成就となる。かつてなら考えられないことだが、田嶋氏は「選手たちが、その気でいるということ。それが一番心強い」と頼もしそうに笑った。

田嶋氏は、その「世界一」に日本サッカーが上り詰めるためには5つのピースが必要との持論を述べた。

<1>個のレベルとチームの連動<2>センターバックとGKのサイズ<3>自国監督<4>準備<5>世界的スターの出現、だ。

「個のレベルは高くなったけれど、日本が持ち味としてきた連係、連動は落ちていない。個と連動は、かみ合わないことも時にはある中で、日本は合致している。それから、やはりセンターバックに190センチ前後の選手がそろったことが大きい。GKも今や2メートル台。これは、JFAの技術委員会がずっと『背の高い選手をどう残して、どう伸ばしていくか』をやり続けたから。目先の勝利を追い求めた場合、小中高と、まだ体に動きがついてこない大きな選手は使われないケースが以前はあったけれど、我慢強く育成するよう、全国に発信し、浸透させてくれた。その駆け出しが(189センチの)吉田麻也選手だった」

180センチ台の前半で長身と言われる時代もあったが「センターバックに、世界にひけを取らない高さが備わった。さらには経験を積めるクラブでプレーできている。とても大きなこと」と歓迎した。

187センチの冨安健洋が、世界最高峰イングランド・プレミアリーグのアーセナルでプレー。188センチの伊藤洋輝も昨夏、ブンデスリーガのシュツットガルトからバイエルン・ミュンヘンに加入し、負傷明けから定位置を奪取。欧州チャンピオンズリーグ(CL)8強まで進んでいる。188センチのDF板倉滉もボルシアMGでブンデスの猛者たちを相手にする。パリ五輪世代で、今回のA代表にも選ばれている川崎フロンターレの高井幸大は192センチだ。森保監督の続投だけでなく、JFAの「継続」も実を結んだ形だ。

GKに関しても、日本がW杯に初出場を果たした98年フランス大会の後、JFAが「GKプロジェクト」を発足させた。同大会を視察したテクニカル・ススタディー・グループ(TSG)から「世界に追いつき、追い越すために必要なことの1つとして、GKの養成が急務との分析」が報告されてから、現在も川俣則幸氏をリーダーに力が注がれている。

専門職のGKに特化し、指導者と選手双方の育成に取り組んできたことが、欧州4大リーグ、中でも堅守で知られるイタリア・セリエAでプレーするGK鈴木彩艶(パルマ)ら多くの選手の誕生につながった。代表格の鈴木は各世代の代表に飛び級で選出されて英才教育を施され、今やA代表の正守護神になっている。

そして「自国監督」。W杯は、第1回から第22回のカタール大会まで、優勝国は全て自国人の監督が成し遂げている。今回も、日本代表を率いるのは日本人。その森保監督は「今はワンチャン狙う立場。2050年には、優勝の有力候補にならないといけない」と、かねて話してきたが、その後の人材も豊富だ。

斉藤俊秀コーチや名波浩コーチらW杯経験者が脇を固め、その後にも、ドイツのフランクフルトで長年プレーし、同国で指導者としてのキャリアを歩み始めた長谷部誠氏らが控える。

日本代表の主将として歴代最多の81試合に出場した長谷部氏も現在、日本代表コーチを務めて“帝王学”を学んでおり、ほかにもW杯や欧州CLを経験した選手たちが、JFAのProライセンス(旧S級)を続々と取得している。自国人の監督で優勝、という夢への土台は広がりつつある。

ラストピースとして期待されるのは、やはりプレーする選手になる。アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド、フランス代表FWキリアン・エムバペら、クラブでは欧州CLの覇者、代表ではW杯や欧州、南米などの大陸選手権で優勝に導いて、バロンドールに選ばれるような「スーパースター」の出現が待たれる。

本田圭佑のACミランや香川真司のマンチェスター・ユナイテッドなどが基準を上げ、田嶋氏は、その夢は遠くない気がしている。

「三笘薫選手が、だんだん近くなってきていると思っている。今年の夏、日本代表選手たちの所属するクラブは、もう1ランク上がるでしょう。三笘選手や久保建英選手がビッグクラブで新たな挑戦を始めれば、期待できるピースが埋まるのでは、と思う。その意味では来年のW杯が楽しみ。会長ではなくなった(名誉会長になった)途端、突如として現場に『優勝!』とプレッシャーをかけていると言われても仕方ないけど(笑い)。それくらい期待できるほど日本を取り巻く環境が変わってきている」と展望する。

あとは、勝利にふさわしい準備をすることだ。日本サッカー全体の歴史に蓄積されている、過去の苦い経験も生かしたい。「史上最強」とは更新されるものだが、アルベルト・ザッケローニ監督が率いた14年W杯ブラジル大会も、そう呼ばれて期待値は高まっていた中、惨敗した。

本田、香川ら豊富なタレントが高い技術を駆使し、攻撃的なサッカーで魅了した。12年には敵地サンドニでフランスを1-0で撃破し、W杯前哨戦の13年コンフェデレーションズ杯ではイタリアに3-4と善戦した。同年11月にはオランダに2-2、ベルギーに3-2と対等に渡り合った。

しかし、ブラジルでは1勝もできず1次リーグで敗退した。今回も期待値が高い分、落とし穴があるのではないか-。

そう田嶋氏に問うと、不安ではなく教訓を紹介した。

「あの時は、試合会場のレシフェなどが(熱帯気候で)蒸し暑かった一方、ベースキャンプ地が涼しい場所だったことが指摘されている。開催都市への移動も試合の1日前だった。公式練習を1回やって終わり。なかなか環境にフィットできなくて、少し、つまずいてしまった。例えば優勝したドイツは暑いエリアにキャンプ地を建設していた」

その試合会場は赤道直下のレシフェ、ナタール、クイアバにあったが、日本の拠点はサンパウロ郊外イトゥ。会場まで2000キロを超える移動と、寒暖差の激しさに、のちに日本代表戦士たちもコンディション作りに苦労したと振り返っている。

田嶋氏が続ける。「ブラジルを教訓にできたのが、次の18年ロシア大会。2日前に試合開催地へ入るようにして、過去から学んで、日本として成長できている」。22年カタール大会はコンパクト開催で移動の負荷がなかったものの、再び来年の北中米大会で移動と時差との戦いが待つ。

スタッフや機材の移動、キャンプ地の選定も含め「我々がしっかり準備できれば、より良くなるもの」と力説する。8大会連続の出場でスタッフの経験値も上がっており「優勝という言葉を口に出してもいいんじゃないかな」と手応えを隠さない。20日のバーレーン戦に勝って日本史上最長「448日間」の準備期間を確保できたことも、JFAとして生かし、全面的にバックアップする意向を宮本会長も示している。

そのW杯北中米大会は来年6月11日に開幕。参加48チームに増え、決勝まで8試合となる中で、序盤に強豪との対戦は避けたい。1次リーグの組み合わせ抽選会は、これまでW杯前年の年末に行われてきた。その際、FIFAランキングでポットが分けられる。日本は現在15位。田嶋氏は「ポイントを見れば、頑張れば11位ぐらいまで上がれると見ている」とも期待する。

この3月に突破を決めたことで田嶋氏は、次回6月のアジア最終予選のラスト2試合で「新戦力を発掘できる」と見込む。一方でランキングを上げるためには負けられない。9月には、日刊スポーツの取材によると、開催国のメキシコ、米国と米国のサンディエゴとナッシュビルで対戦することも判明。その先も、森保監督や選手のリクエストに応じた、大国相手の強化試合が組まれる可能性が高い。

「新しい選手が招集されることによって、今、選ばれている選手たちは間違いなく刺激を受ける。お互い刺激し合って、上がっていけば、チームは強くなる。いろいろな試しもできるようになる。勝つこと、と、発掘すること。これは両方できること。いや、できること、ではなく、やらなくてはいけないこと。ポイントを増やすための(勝ちやすい)相手を選ぶなんてあり得ないし、試して発掘しようと(若手らを起用)したことで負けました、も言い訳にはならないので」

前会長の厳しい顔をちょっぴりのぞかせたのも、期待が大きいからこそ。森保ジャパンの「継続」力を信じて支え、優勝を夢見る。

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