
<ワールドカップ(W杯)北中米大会アジア最終予選:日本2-0バーレーン>◇20日◇C組◇第7戦◇埼玉
日本がバーレーンを2-0で破り、W杯出場を決めた。MF久保建英(23=Rソシエダード)が1得点1アシスト。先人が苦しんだ最終予選で6勝1分け、最多の24得点と最少の2失点と圧倒的強さを示した。3試合を残し、史上最速かつ開催国を除く世界最速の北中米切符獲得に貢献した。
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「エースは俺だ」。そう言わんばかりの活躍を、久保が見せた。1-0の後半42分、自ら左CKをショートコーナーで始め、MF伊東からリターンパス。ドリブルで進入し、クロスと思わせGKの意表を突いた。角度のないシュートをネットに突き刺す。W杯出場を決定づける2点目。仲間からもみくちゃにされ、ユニホームを脱いで、感情を爆発させた。直後にもらった警告も愛嬌(あいきょう)たっぷりのゴールだった。
「たくさんのファンの前でW杯出場を決められてホッとしています」
この3年で大きく立場が変わった。前回の最終予選は負傷の影響もあって4試合にとどまった。22年3月24日に行われたW杯出場決定の敵地オーストラリア戦は、ベンチを温めたままだった。「全然、納得できなかった。ヨーロッパで試合に出ていて、何で試合に出られないんだ! と思っていました。素直に」。今大会は激戦区の2列目で4試合に先発。欠かせない戦力としてチームを引っ張った。その自信から、試合前には「明後日の試合で久保が活躍したうんぬんっていうよりも、大事なのはW杯で活躍することだと思っています。チームが勝てばいいのかなと思います」と大人コメントも残していた。
天才少年と、もてはやされた。スペインの名門バルセロナの下部組織で育ち、中学で日本に帰国。世代別代表に飛び級で選出され、報道も過熱した。活躍しなくてもコメントを求められて、メディア対応を嫌がる時期もあったという。それが今や、堂々と受け答え、年配の報道陣を笑わせることもしばしばだ。精神的にも「大人」になっていた。
先制点も、久保が演出した。前半から一進一退の攻防が続き、相手ゴールをこじ開けられない時間が続いた。後半21分、FW上田からボールを受けるとドリブルで運び、右に走るMF鎌田へ優しいパス。決勝弾をお膳立てし、文句なしのマン・オブ・ザ・マッチだ。
変わっていないものもある。気持ちの強さだ。U-17W杯で久保を指導した現J2仙台の森山佳郎監督は「建英は13歳でしたけど、飛び抜けていた。質問はするし、意見は言うし、先輩を呼び捨てするし、ボール寄こせ、寄こせ、とうるさくて」と苦笑いする。10年近く世代別代表監督を務めた名将にも、そのメンタル的な強さは印象深かった。
「久保くん」と親しまれた、あどけない姿は、もうない。「前回の最終予選は幼さが出た。今回はチームのために、という一心で。ゴールを決めて勝利に貢献できて良かった」。25歳で迎えるW杯で主役になるためのスタートラインに立った。【佐藤成】