
<プレシーズンゲーム:巨人1-5ドジャース>◇15日◇東京ドーム
ドジャース大谷翔平投手(30)が凱旋(がいせん)試合初戦に、完璧かつ美しいアーチを日本のファンに届けた。15日、巨人とのプレシーズンゲーム(東京ドーム)に「1番DH」でスタメン出場。3回無死二塁の第2打席、23年WBCの侍ジャパンでチームメートだった巨人戸郷の初球77・2マイル(約124キロ)のカーブを右翼席へ。確信歩きの一発で、日本ファンを歓喜させた。18日からのカブスとの開幕2連戦(東京ドーム)に向け、大谷の視界は良好だ。
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日本凱旋(がいせん)でさらに集中力が増した大谷が、強烈な当たりをかっ飛ばした。3回無死二塁、戸郷の初球カーブをすくい上げた。鳴り物の応援がない静けさの中で、音が聞こえそうなほどの鋭いスイング。態勢を崩されながらも「いい角度で上がったので、ちょっと先でしたけど、入ると思ってました」。打球を見上げ、すぐに確信した。日本のファンの前でいきなり見せつけた豪快弾。どよめきとともに、さっそうとダイヤモンドを回った。
注目を一身に浴び、アドレナリンがあふれ出る。観客が多ければ多いほど、その期待を力に変えられるのが大谷だ。2年前、WBCの日本ラウンドでも大活躍。強化試合を含め、7試合の打者出場で20打数10安打の打率5割、3本塁打、14打点と打ちまくった。故郷のファンに喜んでもらいたい一心で見せる全力プレー。この日、満員で埋まった4万2064人の大声援に「お客さんにこれだけ入ってもらって、自分としても、久々に帰ってきたなっていう感じがしたので、いいゲーム、いい打席でした」と、手応えを口にした。
冷静に、やるべきことに徹する姿は変わらない。スイングする度に大歓声を浴びながら、フルカウントから外角に微妙に外れたボールを見極め、好球必打を徹底。四球から出塁し、2番エドマンの一塁ゴロでは二塁へスピーディーに滑った。アウトにはなったが、手をつかない新スライディング披露。第2打席では、初球から打ちにいく積極打法で持ち味を発揮した。
ド軍でおなじみの姿も健在。第1打席での出塁後は、ウッドワード一塁コーチとヘルメットをぶつけ合うヘッドパンプを決めた。ベンチへ戻ると、T・ヘルナンデスからヒマワリの種を浴び、ロハスとはデコピンポーズの祝福。昨年、移籍1年目でワールドシリーズ制覇を成し遂げ、野球を楽しんだ姿を母国の日本でも目いっぱい表現した。
試合開始前の先発メンバー紹介では一段と大きな歓声で迎えられ、世界一のスター軍団の中でも注目度はずばぬけている。その空気感を楽しむ余裕がある。ウオーミングアップの合間にT・ヘルナンデスと談笑し、打席間にはベンチで山本、佐々木ら日本人選手と話しながら、リラックスした笑顔が多く見られた。日本でのメジャー開幕戦で、日本人選手が本塁打を打てば史上初。歴史的なアーチに期待がふくらむ。【斎藤庸裕】