
<オープン戦:西武1-0阪神>◇11日◇ベルーナドーム
意地の激走だ。阪神前川右京外野手(21)が土壇場で屈辱を阻止した。敵地西武戦の9回表2死走者なし。1ボールから右腕ウィンゲンターの外角154キロを二遊間にはじき返し、遊撃内野安打をもぎ取った。
「1打席目は真っすぐのタイミングで全部遅れていた。2打席目はだいぶ早めに始動した。タイミングよく振れたことは良かった」
オープン戦では虎が1度も経験していない“ノーヒットノーラン”献上まで残り1アウトだった。遊撃手の滝沢が目いっぱいグラブを伸ばし、体を回転させて一塁送球。タイミングはアウトだったが、ショートバウンド送球がそれた。一塁手の右足がベースからわずかに離れる。西武西口監督のリクエストでも判定は覆らず。Hランプが灯ると、黄色く染まった右中間席はこの日一番の大騒ぎだ。
藤川監督は途中出場でも結果を残した若虎を絶賛した。「ベンチでも非常にゲームに集中して座っていますしね。自分たちの前で見てる姿も立派なものがあります」。ただ、当の本人は開口一番、「そっちよりも1点を取られた送球をちゃんとしないといけない」と猛省するから頼もしい。
9日巨人戦では1回2死一、三塁から左中間安打で三塁送球がそれ、一塁走者の三塁進塁を許した。この日も7回2死一、二塁で前進守備を敷きながら、左前打でカットマンへの送球が二塁側にそれて本塁に生還された。「低く強い送球をしないといけない。ラインがそれてしまったら勝負できない」。もう安打1本で喜べる立場ではない。
ベルーナドームでは高卒2年目、23年5月30日の1軍デビュー戦で3打数無安打。翌31日は全3打席空振り三振。そんな苦い記憶を吹き飛ばし、これでオープン戦は打率4割5分5厘、3本塁打、6打点だ。
「ボールの見え方とかは2年ぶりでだいぶ成長していると思う。ヒットが出たことより、ちゃんと振れてきているのはいいかな」
高卒4年目にして責任感は主軸級。攻守で課題をつぶしていく。【佐井陽介】