
<オープン戦:阪神4-7中日>◇5日◇甲子園
開幕左翼、いただきます! 阪神前川右京外野手(21)が今季の甲子園初ゲームとなった中日戦に5番で出場。チームの甲子園1号を含む3打席3安打の大暴れで2年連続の開幕スタメンに当確ランプをともした。今春実戦は8試合でチーム最多の3発、打率は驚異の4割3分5厘と勢いは止まらない。藤川球児監督(44)もベタぼめの勝負強さを発揮し、“恐怖の6番”が28日の広島との敵地開幕戦で森下を撃ち崩す。
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前川の打球は高々と左翼に上がった。追いかける左翼カリステ。今年の甲子園初ゲームに駆けつけた1万5809人のざわつきが大きくなる中、打球は左翼ポール際に飛び込んだ。虎の背番号58が胸を張った。
「オフシーズンでトレーニングをしてきて、体もある程度強くなってきた。そういうところが打球に出ているのかなと思います」
2回の第1打席。NPB162勝右腕、中日涌井の外角140キロ直球を押し込むように強振した。「流すというか、振り切ろうと思った」。今春実戦8試合でで佐藤輝や森下らの上をいくチーム最多の3発目。藤川阪神の25年本拠地1号を華々しく飾り、寒風の甲子園を熱く盛り上げた。
3回には再び涌井から右翼線へ二塁打、5回には柳から中前打を放った。全方向への3打席3安打。三塁打が出ればサイクル安打だったが、代走が投入された。藤川監督は「サイクル安打止めてしまいました、私が」と笑いつつ、絶賛が止まらなかった。「ずっと打撃の状態も良く、非常に良い状況じゃないでしょうか。本人の手応えもあると思いますけど、打線の並びの中でも非常に大きな役割になってくると思います」。
試合は4-7で敗れたが、チームは10年ぶりとなるオープン戦の開幕3試合連続2桁安打を達成。その好調打線を前川が引っ張っている。新外国人のヘルナンデスらと争ってきた開幕左翼争いで、実戦を重ねるごとにリードを拡大。2年連続の開幕左翼へ、自身の力で当確ランプをともした。
過去に1軍で放った4本塁打は全て右方向。初の左翼弾はこう分析する。
「フォームを少し変えて、ボールの見え方がいいので。ちょっとここ(視界)にゆとりができているのかなと思う」
2月の沖縄・宜野座キャンプ中、重心を低く構える従来のフォームから背筋をピンと立てて構える形に挑戦。肩の力を抜き、ボールを引き込めるようになったことで広角に打てるようになった。今春の実戦打率4割3分5厘も新打法の効果を物語るが、慢心はない。
「今が完成形とは思っていない。徐々に良くしていきたいと思います」
28日の開幕広島戦まで約3週間。納得の打撃を完成させ、森下暢仁を撃つ。【波部俊之介】。