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【グレンデール(米アリゾナ州)25日(日本時間26日)=斎藤庸裕】ドジャース大谷翔平投手(30)が、ブルペンで今キャンプ最多の30球を投じ、投手としてまた1歩前進した。球威こそ抑えめだったが、速球系を中心にさまざまな握りを試し、カットボールやツーシームなどの変化球を交えた。また、セットポジションからクイックモーションで14球を投げ、これもキャンプ4度目のブルペンで最多。5月前後の投手復帰を見据え、徐々に実戦レベルへとギアが上がってきた。
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球威は抑えめでも、スムーズかつ迅速な動きのピッチングだった。ノーワインドアップで投球練習を開始した大谷は、9球目からセットポジションに変更。走者をイメージしながらクイックモーションで投じた14球は、今キャンプ4度目のブルペンで最多となった。動作解析などデータ分析に優れたマクギネス投手コーチ補佐は「彼はホームへ到達するまでの時間を確認しながら、現在地を把握している」と証言。実戦に向けての意図が表れていたのは明らかだった。
昨季、59盗塁をマークした打者大谷からすれば、投手大谷が盗塁対策を立てるのは自然な流れとも言える。一塁走者が二塁へ盗塁するまでの到達時間はMLB平均3・4~5秒前後とされており、一方で捕手の送球は捕球してから二塁まで平均2・01秒。つまり、投手のクイックタイム(初動から捕手が捕球するまで)は1・3~1・4秒が、盗塁阻止の目安となる。この日の大谷はクイックで1・15~1・2秒前後。目安の数値を大きく上回っており、走者にとってはスタートが切りにくい。失点を防ぐ意味で、大きな武器にもなる。
「25年型」の新フォームも、素早いモーションに好影響をもたらす。従来は体重移動しながらホームベース方向に左手のグラブを向けてから、体の内側に巻き込む形だったが、今キャンプではグラブを前方に差し出す左手の動きを最小限に省いている。また、この日はさまざまな握りを試しながら、速球系のボールを変化させる工夫もあった。二刀流復帰へ、日々の改善作業が続いている。
投手復帰は5月前後がメドだが、予定よりも早い仕上がりかどうかについて、ロバーツ監督は「彼がどんな選手なのかを考えれば『イエス』と言えるが、必要なプロセスを踏んでいかなければならない。ショウヘイも、いろいろなことを気にかけている。だが、早く進んでいることには、とても驚いている」と語った。調整具合だけではない。新たな投手大谷は、動きの素早さにも磨きがかかっている。