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ロマン枠じゃない。阪神高卒3年目の井坪陽生外野手(19)が、外野レギュラー争いへ1発で猛アピールだ。18日の沖縄宜野座キャンプで行われた実戦形式(ライブBP)で、ドラフト1位ルーキー伊原陵人投手(24=NTT西日本)からインパクト抜群の柵越えを放った。藤川球児監督(44)が「可能性は無限」と宜野座組に抜てきされた1人。次世代のスター候補? いやいや激戦区の外野手争いへ殴り込みだ。
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正午のランチタイム。打席に入った井坪は、気合に満ちていた。「もう真剣勝負のつもりでやりました」。ドラ1ルーキー伊原の内角142キロ直球に、うまく腕を折りたたんでフルスイング。ドジャースのベッツを連想させる打撃フォームから放った打球はぐんと伸びて、左翼スタンドへと届いた。
「今日はすんなりバットが出てきた。この前の実戦の時はちょっと力みが多かったので。試しに7、8割の力でスイングしてみようと思ってやったら、いい結果が出た」。15、16日の対外試合2戦では計6打数1安打。試行錯誤を華麗な1発につなげた。
打席に入る直前、藤川監督から「気合を入れていけよ」と声をかけられていた。熱いゲキに応えた高卒3年目に、指揮官もニッコリだ。「目が輝いてましたね。ただ立ってるんじゃなくて、勝負をしていた。僕は見てて楽しかった。気合入ってるなという感じに見えました」。キャンプ直前には「若い選手の可能性は無限。何かで彼らが急成長を遂げて、開幕(メンバー)に入ってきたり」と名前を挙げて、宜野座組に抜てきした若手の1人。さらなる進化を期待せずにはいられない。
外野手争い、特に左翼のレギュラー枠は最激戦区だ。前川ら若手に加え、新加入のヘルナンデスも高いポテンシャルを見せる。激しさは増すが、19歳は地に足着けて冷静だ。キャンプでは毎朝必ず、室内練習場で置きティーに取り組む。「自分の中で、去年の秋から習慣。昨日の課題と今日やりたいことを、まずティー打撃で朝やります」。目的は確認とケガ予防。鍛錬の毎日を過ごすために、やるべきことを怠らない。
この日は35球で安打性6本を放ったが、課題も出た。最初に対戦したゲラ相手には、3球目のカットボールでバットを折られ、10球のうち安打性の当たりはゼロ。「ああいう速い変化(球)にどうついていくかが今後課題になる。ゲラとやれたのは本当にいい経験だったと思う」。すべてが成長の糧になる。上昇気流に乗って、左翼争いに割って入る。【磯綾乃】
◆阪神の外野争い 中堅近本、別メニュー調整中の右翼森下も事実上固定。残る左翼は多数の候補で争う激戦区となっている。その中でも、昨年初めて1軍完走した前川が実績から1歩リード。新加入で内外野を守れるヘルナンデスは、今キャンプで攻守に存在感を見せている。昨季3本塁打をマークした右の大砲・井上も魅力で、昨年1軍デビューした野口もポテンシャルが高い。そこへ実績のある島田に小野寺も控える。宜野座組に抜てきされた19歳井坪が、ここから食らいつけるか。
◆井坪陽生(いつぼ・ひなせ)2005年(平17)3月17日生まれ、東京都出身。関東第一では通算32本塁打ながら、公式戦ではわずか1三振。同校から22年ドラフト3位で阪神入り。昨季はウエスタン・リーグ105試合に出場し、75安打、2本塁打、28打点、15盗塁、打率2割7分5厘。177センチ、88キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸600万円。
▽阪神小幡(本職の遊撃ではなく二塁で守備練習)「3年ぶりの景色でした。見え方的には問題ない」
▽阪神高寺(早出特守で一塁守備を練習)「むずいっすね。練習するしかないです。頑張ります」