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ベールを脱いだ剛腕に他球団007も戦々恐々だ。阪神の新外国人ジョン・デュプランティエ投手(30=ドジャース3A)が17日、宜野座キャンプのライブBP(実戦形式の打席練習)で来日後初めて打者に投球した。直球を中心に21球を投じ、許した安打性は1本だけ。長い手足を駆使して早速154キロを計測し、他球団スコアラー勢を震え上がらせた。最速157キロの知性派剛腕。ハイレベルな先発ローテ争いに割って入りそうな気配がプンプン漂う。
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身長193センチ。長い右腕がスリークオーターから打者方向に伸びる。しかも直球は真ッスラ気味。デュプランティエの直球は相当、厄介だ。来日後初の打者への投球。先頭打者の井上から初球、直球で押し込みファウルを奪う。2球目、今度はフロントドア気味に入ってきた内角直球ストライクで体を硬直させた。冒頭のたった2球に魅力を凝縮させた“お披露目投球”に、本人も納得顔だ。
「この時期は、いつもなら真っすぐが良かったり悪かったりはっきりしているんですけど、今日はすごく感覚も良かったです」
井上、野口、島田、豊田の4人に計21球。8割超の17球が直球だ。ボール球が11球と荒れ気味ではあったが、安打性は豊田の1本のみにとどめた。2月中旬の段階で早速154キロを計測。その直球には他球団007も戦々恐々だ。ヤクルトの松井スコアラーは「真っすぐは手足も長いですし、力強い。少しクロスに入ってくる。右打者は踏み込みづらくなる。横浜のジャクソンのようになられると怖いですよね」と警戒。「そもそもいい投手陣が厚みを増すと、本当に打てる投手がいなくなっちゃう」と苦笑いするしかなかった。
米国では通常、2月中旬にキャンプが始まる。右腕にとっては例年よりも早い始動となった今春。しかも第2クール中には体調不良で練習欠席、別メニュー調整も余儀なくされたが、「状態が上がってきたのは(日本に)早く来られたから」と冷静だ。名門ライス大出身で、入団前から日本や阪神の歴史、文化などを調べてきた勉強熱心な右腕。昨季リーグ2位のチーム先発防御率2・62を誇ったハイレベルなローテ争いの中でも、十分に対抗できそうな心技体の持ち主だ。
この日は登板前に祈りをささげるルーティンも披露。帽子を取り、右膝を地面につけて感情を整えてから投球した。「対戦相手への尊敬の気持ちを持っている。また、(自分にも)幸運が訪れるように祈っている」。虎にも幸運をもたらし、王座奪回の使者になる。【塚本光】
▽巨人真田スコアラー(デュプランティエの投球に)「腕の使い方が柔らかくて、リリースポイントも多分前だと思う。ボールの出力もこれから上がってくると思う。すごくいい投手だと思います。デュプランティエ投手が先発に入ると、(別の先発投手が)リリーフに回る。そうなると、すごい強力な投手陣になる」
▽阪神安藤投手チーフコーチ(デュプランティエの投球について)「ブルペンで投げている印象と、また少し違った。しっかり強い球を投げられていた。少し球は荒れていたけど、それ以外は順調かなと思います」
▽阪神島田(打席に立って)「速さは一番感じました。めちゃめちゃ速い。腕長いなと。あの速さでちょっと真っスラしてきていたので、打ちにくそう」
▽阪神坂本(デュプランティエの球を受けて)「大きさもあるし、怖さも打者は感じるだろうし、(NPBに)あのタイプはいない感じ」
<デュプランティエ アラカルト>
◆生まれ 1994年7月11日生まれ、米デラウェア州出身。
◆球歴 ライス大から16年ドラフト全体89番目でダイヤモンドバックスに指名され、19年にメジャーデビュー。同年は先発、中継ぎで15試合に登板し初勝利、初セーブ。21年にも4試合に先発した。昨年11月にブルワーズとマイナー契約。その後、再び自由契約に。メジャー通算19試合(先発7)、1勝4敗1セーブ、防御率6・70。
◆球種 最速157キロの直球とカーブが武器。スライダー、カットボール、チェンジアップも操る。
◆直近で覚えた日本語 「お先です」「知らんけど」。
◆阪神との縁 昨年はメッツ3Aで元阪神の藤浪と同僚。ブルペンで話す機会が多く「自分自身を大切にして、日本のゲームを楽しむこと、球場の雰囲気を楽しむことを教わりました」。
◆アピールポイント 「変化量がすごく大きいので、そこが一番の強みかなと思います」。
◆ラーメン好き 来日前も「陣屋ラーメン」に通っていた。
◆サイズ 193センチ、103キロ。右投げ左打ち。