来季プロ18年目を迎えるソフトバンク中村晃外野手(35)が、25年シーズンを前に「原点回帰」を誓った。
「自分がどういう打者だったのか。もう1回、見つめ直してやった方がいい」。ハワイのV旅行から帰国して、球団と来季契約の交渉のテーブルについた。5000万円ダウンとなる年俸1億円プラス出来高払いでサイン。2年契約が終了し、同条件で延長できるノルマは達成できなかった。
「代打の切り札」が今季のポジションだった。101試合に出場し、70試合が代打だった。打率2割2分1厘、0本塁打、16打点に終わった。昨年まで一塁のレギュラー。4年連続でゴールデングラブ賞に輝いた男も大砲・山川の加入で「一振り」にかける立場となった。「どうしても最近は長打を重視する野球。そこを目指そうとしたが、なかなか思うようにいかなかった」。戦況を見守りながら、自発的にベンチ裏の素振り室に行ってはバットを振った。通算1427安打を放ち「打撃職人」と呼ばれる男も1打席勝負の難しさを痛感した。
回帰点はほぼ10年前へ針を戻す。中村晃は13年から6年連続で130安打以上を放ち、14年はシーズン176安打でリーグ最多安打に輝いている。「自分がやってきたものをもう1度、ちゃんと表現できるように。自分がどうやってプロ野球選手として築き上げたか見つめ直して、それを表現できるようにしたい」。そう言って視線を上げた。
来年11月で36歳。人生の半分をプロ野球選手として歩むことになる。「もう福岡の人っていう感じですね。僕の中では」。9月には第1子(長男)も誕生。武骨な男も子どもの前では目尻が下がりっぱなしだ。大幅なダウン更改。バラ色のオフとはならなかったが、小久保監督を含め、チームの信頼は揺るがない。
中村晃が生まれた日は秋晴れのまぶしい太陽に包まれていたという。それで「晃」と名付けられた。プロ年数はチーム最年長の柳田より長い。まだまだ頼れるスラッガーはホークスに「光」を放ち続ける。【佐竹英治】