洗練された足元だけじゃなく、整った顔にも視線を集める。ヤクルト西川遥輝外野手(32)が、ほろ苦い記憶を払拭する。「やっぱりタイトルなんですよね」。日本ハム時代に4度の盗塁王に輝いたスピードスター。21年以来、4年ぶりのタイトルとなれば、河野旭輝(56、57年阪急、62年中日で獲得)に次いで史上2人目の両リーグで盗塁王。誰もが忘れない球界の顔となる。
あれは数年前のこと。「確か都内だったかな」。オフに街を歩いていると、若者が近寄ってきた。プロ野球選手なら、誰しもが経験するであろう声かけ。「すみませ~ん、写真いいですか?」。球界屈指のイケメンの西川なら、そういったお願いも日常。快諾したが、いつもと様子が違う。カメラを起動した若者の携帯は、すぐに下へ向けられた。「あ、俺じゃないんだ」。
足元には、ファレル・ウィリアムス×シャネル×アディダスのスニーカー。その写真のリクエストだった。「自分かと思って、恥ずかしかったですね」。17年に世界500足限定で発売された伝説のトリプルコラボ。販売価格は約13万円と言われた中、一時は300万円を超える値を付け、今もサイズによっては200万近くのプレ値を張る。西川は、当時のことを懐かしみながら「最近履いていないなぁ~。寝てますわ」と笑った。
北海道の日本ハム、仙台の楽天と渡り歩き、今季から加入した初のセ・リーグは大都会・東京のヤクルト。「別に声かけられることはない」と言うが、常にイケてるスニーカーを履く男はオシャレな街に溶け込む。「賞を取ればね、(NPB)アワードにも行ける訳で。顔も覚えてもらえる。(楽天)辰己みたいに金ぴかで。冗談っす(笑い)」。スニーカーヘッズが思わず、顔を上げるような成績をその足元から刻む。