19日に肺炎のため死去した読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏(98)を、巨人の歴代指揮官たちもしのんだ。元監督の長嶋茂雄終身名誉監督(88)前監督の原辰徳オーナー付特別顧問(66)阿部慎之助監督(45)が、球団を通じてコメントを寄せた。
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長嶋巨人終身名誉監督は、球団を通じてコメントを出した。
「突然の訃報でした。しばらくは、何が起こったのか、頭は白紙の状態でした。古く長いお付き合いで、巨人を離れても沢山の思い出があります」
渡辺氏の盟友だった中曽根康弘元首相(故人)が、東京・上北沢にある長嶋氏所有の邸宅を借りていたこともあり、古くから面識はあった。濃密な関係になったのは、長嶋氏が巨人の監督に復帰してから。長嶋氏は事あるごとに東京・大手町の読売新聞東京本社を訪れ、コミュニケーションをとった。極秘会談は数知れずで、大きな補強の際には事前に了承を得ていた。
2人の「最大の危機」は98年。ガルベスが審判にボールを投げつけ、チームの勢いも急降下した8月、渡辺氏は「メークドラマはない。2、3年かけてじっくり永遠の巨人軍をつくる」と語り、長嶋監督体制の存続も含めた見直しを示唆した。長嶋氏は頭を丸刈りにして、渡辺氏に進退伺を提出。読売の一部首脳は新監督の招聘(しょうへい)に動き、渡辺氏もいったんは監督交代を了承した。しかし、世間には長嶋氏への同情論が吹き荒れ、新監督を招くには至らず、長嶋氏の続投となった。
渡辺氏が過激な発言をしても、長嶋氏は「大丈夫。オーナーとはコミュニケーションが取れていますから」と受け流す事が多かった。渡辺氏も懲りたのだろう。00年にON決戦を制して2度目の日本一になった長嶋氏が、監督勇退をほのめかすと全力で慰留した。
長嶋氏は「今、何を話せばよいのか、巨人が勝った時の渡辺さんの笑顔しか浮かんできません」とコメントを締めた。特別な関係にあった渡辺氏の訃報に、落胆している様子が伝わってきた。