オイシックスのトライアウトが6日、ハードオフエコスタジアム新潟で行われた。
高校生や大学生、独立リーグ出身選手など、計61人が受験。1次、2次テストで30名程度に絞られ、最終テストで合格を勝ち取った数名が、来季にオイシックス入りが可能となる。
そんな受験者の中に、ひときわ男前な選手がいた。秋山高志さん、43歳。1980年代で「松坂世代」の1人だ。普段は会社員として働いている。
白球を追いかけ続けた東和大昌平高(現・昌平)3年時には左翼のレギュラーとして、東埼玉大会(80回記念大会)で8強入り。プロ入りも夢見た。
もちろん受験者の中ではダントツで最年長。秋山さん自身も「周りの若い子はプロを目指して、上を目指してやっている」と自覚する。
そんな中、なぜトライアウトを受けようと思ったのか-。
母夕起子さんが9月25日の朝方に急逝した。くも膜下出血だった。その前日の24日はともにオリックスT-岡田の引退試合を見ていた。「ああでもない。こうでもないって一緒にしゃべってね。野球は好きだったと思います」。
大好きだった母を亡くし、「精神的にも参ってしまって。このままだとふさぎ込んででしまう」。そんな時にオイシックスのトライアウト実施の記事を見つけた。
「何か目標を持って、熱量を持って打ち込めるものってなったときに『これだ』と思った」。くしくも、トライアウト当日の11月6日は夕起子さんの誕生日だった。
結果は1次、2次テストで不合格。「割り切っていた」と本人でも自覚していたし、「周りの子が本気で上を目指しているところで…」と申し訳ない気持ちもあった。それでも「約20年ぶりではあったけど、高校時代を思い出したというか。受けると決めてから本気で練習してきた」と約1カ月と短い期間でも鍛錬は惜しまなかった。
前日5日は、同じ「松坂世代」でもあるソフトバンク和田毅投手が現役引退を発表した。「やっぱさびしいですよね」と惜しみながらも、「その中で僕がトライアウトっていう地に足を踏み入れて。そんなやつが1人居ても面白いですよね」と笑った。
トライアウトでは「大好き」という西武秋山幸二と一緒の中堅につき、フリー打撃でもヒット性の当たりを5本打った。「やりきったと思います。元気に動き回ってるところを、きっと見てくれていたと思います」。
天気が心配された新潟市。11月にしては暖かい日差しに照らされている秋山さんの姿は、かっこよかった。